二十五本目の火柱 ページ25
激しい二人の殴り合いを見つめる。
何か喋っているようだけど内容まではわからない。
刺青の男の頬に杉元さんが拳を入れるとついに男の膝が着く。
｢そこまでだ、もうやめろッ！！｣
すぐ近くまで駆けつけていた谷垣さんが叫ぶ。
後ろに月島さんと鯉登さんもいた。
……なんで君らも何も着てないんだ。
バリバリｯｯ！！！
｢あ｣
ドボンっ！
突如地面が割れて杉元さん達が沈む。
どうやら下は水のようだった。
こんなに寒いのにそんな姿で水に入ったら……。
｢うひいいッ！！冷てえ！！！！｣
ぶはっと顔を出した杉元さん達は近くの小屋に一目散に走っていった。
私はチカパシくんとエノノカちゃんの元に行く。
｢素晴らしい成果だな！良くやったぞ、チカパシくん、エノノカちゃん。｣
｢ううん、あなたのおかげ。おしゃべりロシア人止めてくれた。｣
｢ありがとう！！｣
素直に感謝されるととても照れくさい。が、同時に嬉しい。
｢
｢いやあ谷垣ニシパが手伝ってくれたから…。｣
｢うん、チカパシ目つぶってた。｣
｢え！チカパシくんクズリ倒したのか！｣
うん！と元気よく頷いたチカパシくん。
とても勇敢だなあ。
好奇心はこんなにも子供を成長させるのだな。
しかしこの小屋はなんなんだ。
スチェンカの会場のように煙がもくもくと上がっていて…唯一中を見ることが出来る小窓は二人が塞いでしまっている。
その二人を押しのけてまで中を見ようとは思わないが。
まあ煙も上がっていることだし暖かいのは目に見えている。
それなら私達も入れてくれればいいのに。
.
｢
刺青の男基、岩息さんはそう言った。
発音もそこまででまったく日本人らしい。
月島さんを見てみろ、もうロシア人だぞ。
月島さんは岩息さんに次会ったら殺すーとか物騒なことを言って別れた。
死んだ気になって勉強か、勉学はあまり縁がない。
魂の影響で少しだけ教養はあるものの、ずば抜けてないからあまり使えないな。
｢鶴見中尉の判断を仰がずに逃がして良かったのか？｣
｢全て私に任されています。｣
そう言うと月島さんは杉元さんを睨む。
｢当然お前の処遇もだぞ。また同じようになった時は容赦しない。
自分を制御出来なければ、いつか取り返しのつかないことになる。｣
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
