十六個目の火の玉 ページ16
あまりの匂いにそっと手で口元を覆った。
｢…例の囚人はいまこの中にいるのか？｣
その言葉にロシア人は首を振った。
『彼は強い男としか戦わない。興味のある相手がいないとスチェンカに出ない日もある。』
杉元さんは瞳をギラつかせてスチェンカを見ていた。
ついでに言うと私はとてもこのスチェンカというものに参加したい。
あっちでは悪霊をボコボコ殴っていたのだが、こちらに来てからは未だ誰も殴っていない。プレートを割っただけだ。
実を言うとものすごく発散したい。
誰彼構わず殴るのは気が引けるが敵がいるのならやりやすい。
｢とにかく俺たちがスチェンカで勝つからすぐに犬を返さんと頭の毛を全部毟ると伝えろ月島軍曹。｣
｢なんで�牴兇燭銑瓩覆鵑澄�｣
｢出るのは杉元だけで充分じゃないか。｣
｢そもそもお前がなぐったのが悪いんだぞ。｣
｢あ？連帯責任だろ。｣
安心してくれ杉元さん、私は出るぞ。
そう伝えようと杉元さんの袖を引く。
｢ん？Aちゃんどうしたの？気分悪くなった？｣
｢いやそうじゃなくてだな。杉元さん私は出るから安心して欲しい！｣
そう言うと固まるみんな。
すぐに杉元さんが首をふる。
｢ダメだ！危険だよ。｣
｢だっ、大丈夫だ！相手を割ったりしない！｣
｢そういう問題じゃないんだけど……。｣
うーんと首を捻るばかりの杉元さんになんとか出たいと懇願する。
そんな私たちをみてロシア人は杉元さんを指さした。
きっと杉元さんだけ出ればいいと伝えているんだ。
｢ひとり抜けた穴を埋めればいいと言っているぞ。｣
それなら杉元さんだけが出れば解決する。
少し、というかかなり残念だが仕方ない、か。
｢�爐�前ら日本人だけではロシア人に勝てない�瓠帖弔世函�｣
｢�爛�キのお守りをする暇はない�瓠弔世函�｣
そんな月島さんの通訳にピキッと空気が変わる。
｢この薄らハゲ……！！｣
｢もう日露戦争を忘れたか。｣
｢ぶっ殺す。｣
出てやる。
スチェンカに出るやつらみんなぶっ殺す。
月島さん、鯉登さん、谷垣さんも同じようにやる気を出したので、みんなで出ることになった。
私を除く四人が1チーム。
殴られたロシア人の穴あきチームに私が入ることになった。
かなり邪険な視線を送られたが痛くも痒くもない。
テメーらもぶっ潰してやるからな。
そんな思いも込めながらチームメイトを睨んだ。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
