十一個目の火の玉 ページ11
小さいその子は着いてきたアイヌの男の子、チカパシくんと同じくらいの子だった。
｢アシㇼパさんじゃない……。｣
｢樺太アイヌの女の子だったのか。｣
まあそんな簡単に見つかるわけもないよな、と思い彼女の言葉を聞く。
｢ヘンケの耳悪い…ヌソからわたし落ちた。クコタヌフ帰る。ここまっすぐ私のクコタヌフ。｣
｢橇から落ちたのにジイさんの耳が遠くて気づかれず置いてかれたから、近道で森を通ったってことだろう。｣
鯉登さんの翻訳はきっとあっているはずだ。
なんともわかりやすい。
｢わたし会った。北海道から来たアイヌの女の子。｣
｢｢｢｢！！！！｣｣｣｣
杉元さんがまた写真を取り出して聞こうとするとチカパシくんと共に鯉登さんの荷物に隠れていた犬、リュウが吠え出す。
その先には黒い塊……ヒグマだ。
｢…？様子がおかしいぞ。｣
ヒグマはよろよろと足取りが覚束無くギャウゥ！！と悲鳴を挙げているようだった。
｢血が出てる、ケガしているのか？｣
ヒグマは必死に何かを払おうとしていて体をブンブンと振っている。
確かにヒグマの体は不自然にポコンと膨らんでいた。
｢なんか小さいのが落ちた！｣
ヒグマから落ちた生き物はのそりと起き上がる。
そしてヒグマは血を流しながら私たちの脇を走っていってしまった。
｢鯉登少尉殿離れてください。｣
｢これがさっき言ってたヒグマより凶暴な奴なのか？なんか弱そうだな。｣
図太いというか危機感がないのか、その生き物に近づいていく鯉登さん。
いや明らかにダメだろ。
挙句に可愛いとまでいう始末だ。
｢ゴルルルルル！！！！｣
｢月島ァ！！｣
ヒグマより凶暴な動物、クズリは容赦なく鯉登さんに襲いかかった。
素早い身のこなしで鯉登さんの後ろに回ると背中に噛み付く。
すぐに動いた月島さんはクズリを蹴飛ばし銃を構える。
間髪入れずに撃ったはずなのに命中しなかった。
次にガサガサと音を立てて飛び出してきたのは女の子の真上。
間一髪チカパシくんが守りクズリは杉元さんが投げ飛ばす。
｢その子を連れて行けッ！その子はアシㇼパさんの情報を持っている！｣
投げ飛ばしたクズリを月島さんが発砲する。
｢やったか？｣
｢わからん。とにかく離れるぞ、走れッ！｣
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
