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僕は不知火の隣に座った。目の前には不破雷蔵先輩。そして不破先輩の隣には鉢屋三郎先輩と尾浜勘右衛門先輩。僕は怖くて、不知火の袖をギュッと握り締めた。
駄目だ…前見ないと…でも怖いっ……。
不意に鉢屋先輩に名前を呼ばれた。ただ名前を呼ばれただけなのに、僕は怖くて仕方がなかった。震えをとめようとしても全然とまらないし、前を見ようとしても怖くて見れないし…やっぱり僕には無理だ……。
不知火に助けを求めようとしたその時、不知火が僕を呼んだ。
不知火は僕に先輩たちを見てあげてほしい、もう天女に操られている先輩たちじゃないと言ってきた。
そんなこと僕だって分かってる…分かってるよ。だけど怖いんだ。でも…でも今は隣に不知火がいる。不知火は僕を守ると言ってくれた。だから今の僕なら大丈夫な気がする。
僕は勇気を振り絞って顔を上げた。
そこには辛そうな顔をした先輩たちがいた。
僕と先輩たちの視線が交わる。
何か言わなければ…でも声が出ない……。
そしてそんな沈黙を破ったのは鉢屋先輩。それから尾浜先輩、不破先輩の順にそれぞれの思いを話してくれた。
先輩、本当は知ってましたよ。先輩たちが天女の妖術で操られていたのも、先輩たちがどんな思いで僕たちにあんなことをしていたのかも……あの時の先輩たちの顔を見れば分かります。だからこそ僕は、いや僕たち下級生は先輩たちのことを嫌いになれないんです。確かに先輩たちのことは怖いです。でもやっぱり先輩たちのことがまだ好きで、前みたいに戻れたらってずっと思ってるんです。
だから僕はもう、後ろを振り返らない。
弱くたって立ち向かえる。
僕はそんな勇気を不知火にもらったから。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時