- ページ50
「これで終わりだっ!!」
「「ッツ!!」」
「っつあぁぁぁぁぁぁあ!!」
「し、不知火さんっ!!」
「チッ、おい女!邪魔すんじゃねえよ!」
何とか間に合った私だったが、伏木蔵君たちを庇ったことにより、その手甲鉤は私の背中を思い切り引っ掻いた。私は痛さのあまり、膝から崩れ落ちた。その武器はまるで猫の爪のよう。だが痛みは猫に引っ掻かれたような生易しいものではない。次第に服に血が滲みだし、どくどくと脈打つのを感じた。
「はぁ・・・はぁ・・・っつ・・・」
「女、そこを退け。今退けば、お前の命くらいなら助けてやってもいい。」
「い、やだっ!」
「・・・そうか。」
「あぁぁぁぁぁあっっ!!」
男は私の背中を足で踏みつける。
私は息が止まりそうになった。
血は更に溢れだしてくる。
涙も止まらない。
痛くて、痛くて、こんな痛みを味わうくらいなら、いっそのこと殺してほしいとさえ思える。
「もうやめてくださいっ!!貴方の目的は僕でしょ!?僕はどうなったって構いません。だからもう、不知火さんに酷いことしないでくださいっ・・・!」
「ふし、きぞっ、くっ・・・」
「最初から素直に捕まっていれば良かったものを。」
男は私の背中から足をおろし、伏木蔵君に手を伸ばす。
「だめっ!!」
私は最後の力を振り絞って、男の手に噛み付いた。
「痛っ!!くそっ、離せ!!」
男は私の顔を殴る。
頬がじんじんする。
だけど今は痛みなんてどうだっていい。
伏木蔵君たちを守らないと。
「嫌っ・・・嫌だっ・・・不知火さんから・・・A先輩から離れろっ!!」
「なっ!?」
身体を震わせ、涙をボロボロと流す伏木蔵君。
怖くて仕方ないはずなのに、伏木蔵君は男に体当たりをし、小さな手で何度も男を叩く。
「このガキっ!!」
男は伏木蔵君の頭を鷲掴み、そのまま地面に叩きつけた。
「気が変わった。」
あれは苦無……?
「やめてっ!!」
「死ねぇぇぇえ!!」
男の苦無が伏木蔵君の腹部に突き刺さる。
そして男が苦無を思い切り引き抜くと、その部分から血が溢れ出した。
「なん、で・・・ど、しよっ・・・」
守れなかった。
何も、できなかった。
見ていることしかできなかった…。
47人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時