- ページ34
無事、町に辿り着くことができた私は早速、吉野さんに頼まれた茶菓子をお店に買いに行った。
お店に入ると、美味しそうな和菓子が何種類も並べられていた。私は吉野さんに渡された銭を店の主人に渡し、適当に見繕ってほしいと頼んだ。
主人は何個か和菓子を選び、綺麗に箱詰めしてくれた。私は主人からそれを受け取り、来た道を戻った。
このペースなら、日が沈むまでには帰れそうだ。
「誰か〜!誰かいませんか〜!」
そんな聞き覚えのある声がどこからか聞こえてきた。
「誰か〜!」
一体どこから叫んでいるのだろう?
私は辺りを見渡した。
だけどどこにも人の姿なんてなかった。
「誰かいませんか〜!」
「どこにいるの〜?」
私はそう声の主に問いかけた。
「ここです!穴の中です!」
穴?
よく見るとあそこだけぽっかりと穴が空いていた。
私は穴の側まで行って、中を覗き込んだ。するとそこにいたのは、三反田君と眼鏡をかけた男の子だった。どうやらその男の子は気を失っているようだ。
「あっ、不知火さん!」
三反田君は私を見た途端、パァァっと笑顔になった。
私は三反田君たちを穴の中から引き上げた。
「不知火さん、ありがとうございました!」
「いえいえ。それよりその子、大丈夫?」
「それが乱太郎、穴に落ちたときに気を失って・・・呼吸は安定しているんですけど・・・・・・。」
「じゃあ私がその子を忍術学園までおぶっていくよ。三反田君は手首怪我してるみたいだし。」
「よ、よく僕が怪我してるって分かりましたね。そんな素振り見せてなかったのに・・・・・・。」
「なんとなくだよ。」
私は男の子を背中に乗せ、歩き出した。
「それにしても、不知火さんが忍術学園の外にいるなんて驚きました。」
「吉野さんに茶菓子を買ってきてほしいと頼まれて、町まで行ってきたの。」
「吉野先生が・・・余程、吉野先生は不知火さんのことを信頼しているんですね。」
「えぇ、そうかな?まだ事務の仕事を初めて三日だし、吉野さんとはほとんど会話もしないけど・・・・・・。」
「それでもきっと吉野先生は不知火さんのことを頼りにしていると思います。だから自信持ってください!」
「ふふっ、ありがとう。」
私は隣を歩く三反田君の頭を軽く撫でた。
すると三反田君は顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
それから私たちは無事、忍術学園に着くことができた。
47人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時