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一年ろ組の鶴町伏木蔵が言っていた。
新しい天女は必ずこの時間帯に食堂へ来ると。
僕は伊助と食堂で、新しい天女を待つことにした。
ちなみに伊助は僕だけで行かせるのが心配で着いてきてくれた。
そして天女はやって来た。
隣にいるのは六年い組、潮江文次郎先輩。
噂で聞いたとおり、潮江先輩とは特に仲が良いようだ。
僕は天女のそばまで行った。
僕の行動を食堂にいた上級生たちは、驚いた様子で見ていた。だけど誰も僕のことを止めようとはしなかった。やはり先輩方は既にこの天女と関わっているようだ。
僕は小さく深呼吸した後、天女のことを見た。
僕は驚いた。その天女はA先輩と瓜二つだったからだ。でもこんなところにA先輩がいるわけがない。僕は自分を落ち着かせようと、この人はA先輩じゃないと自分に言い聞かせた。だけどやっぱり何度見ても、この人はA先輩で……もしかすると本当にA先輩なのではないかと思えてきた。
確かA先輩は左の耳たぶにホクロがあった。
僕はホクロがあるかどうか確認しようとした。
しかし彼女の耳は髪で隠れていて見えなかった。
やっぱり駄目か…そう思った時……
彼女は“えっと”と呟き、右に首を傾げたのだ。
その拍子で髪がさらりと落ち、耳が見えた。
そして彼女の左の耳たぶにはホクロがあった。
この人はA先輩だ。
僕はずっと溜め込んでいた思いを、A先輩に伝えた。だけどA先輩は何も覚えていない様子だった。
そりゃあ僕にもA先輩の記憶がなかったように、A先輩にも記憶がないのは当たり前だよね。
でもやっぱりA先輩に僕のことを思い出してほしくて、僕はまた初めてA先輩にあった時のように、自己紹介をした。
すると、A先輩は少し黙り込んだ後、“庄ちゃん”と言ったのだ。僕はA先輩が僕のことを思い出してくれたのかと思い、声を上げた。だけどそんなすぐに思い出すわけがなく、ただ単にA先輩は庄ちゃんと呼びたいだけだった。
僕は“はい”と一言言った後、伊助のところへ戻った。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時