第243話 ページ15
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「立場を弁えろ。俺の気分1つで大事なお仲間が死ぬぞ」
「‥‥‥」
「話を戻す。お前は5歳で両親が死に、孤児院に入った。滅亡後は京都の地下都市で生活し、10歳で軍に入隊。そして4年前に消息不明。
少なくとも入隊のところからは事実だ。だが、それより前のことは所々巧妙に偽造されている上に5歳までの経歴一切が空白。これはどういうことだ?」
「‥‥どういうことも何も」
「わかりやすく質問を言い換えてやる。───お前は昔、柊の姓を持っていたな」
百夜は一瞬だけこちらを見た。今度は間違いなく俺達5人の顔を一人ひとり見て、目を閉じる。そして次に目を開けた時、そこに僅かな諦めを感じ取った。
「その推測に至った経緯を聞いても?」
「柊の家系には12年前に死んだ
───“はい”か“いいえ”で答えろ。お前の本名は“柊
その理由も、事情もわからない。百夜Aという人間は謎めいている。だがその名前すら嘘だと言われてもにわかには信じられなかった。
結局彼女について自分は何を見て何を知っていたんだろうという遣る瀬無さだけが残る。
「これは推測が8割だ。だが、外見、頭脳、考え方に並外れた才覚と、性格。お前はあまりにも真昼に
柊暮人は彼女の足元に書類を乱雑に落とした。忌ま忌ましい、とでも言うように。
この部屋は大して広くもないので、ばら撒かれたそれは俺の足元にも舞って落ちた。視線を落とすと文字や写真だけでなく家系図なんかも記載されていた。
この男の言う通り、これに彼女の「過去」が全て載っているだろうことは容易にわかる。しかしそれを読む気にはならなかった。
「‥‥っふ、はは、あはは」
「‥‥笑うな。真昼を思い出す」
「なるほど。結局私は、姉さんと同じというわけですね」
殺意。
それを認識できても、柊暮人が抜刀する速度は肉眼で捉えることができなくて、対応が遅れる。横にいた風間さんと同時に背後の3人を庇うよう立つが、おそらく間に合わない。そんなゼロコンマ数秒の攻防。
気付けば俺の喉元ギリギリに柊暮人の握る刀の切っ先があって、その腕には無数の黒い糸のようなものが絡みついていた。だがそれに実体はなく、不気味に揺らめいている。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時