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第242話 ページ14

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「‥‥何者だ、ですか。日本帝鬼軍大佐、《柊家》直属部隊隊長の百夜Aです」

「そんなわかりきったことは聞いていない。お前の“正体”を聞いている」

「ですから、さっき言った通りです。それ以上でも以下でもありません」


「正体」という言葉に、まるでこの男は百夜が身分を偽っているかのような前提で話を進めていることを察した。

そもそも俺達だって、「百夜教」が管理していた孤児院の子供が、敵対していたというこの組織に所属していることが奇妙なことだとは思っていたのだ。しかしたとえそうだとしたって、それが俺達と彼女の間で何か変化があるわけではないとも思っていた。


「お前のことを調べた。結果、軍情報部にある百夜Aの過去は、捏造されたものだったとわかった。だが、それは一体どこからが捏造だ?」

百夜は沈黙を貫いた。伏せていた目を上げ、こちらを見る。その視線は俺達の背後に立つ一瀬グレンに向けられているような気がしたし、この場にいる誰にも向けられていない気もした。

それこそ、彼女にしか見えない「なにか」があるように。


「‥‥黙秘するか。また両手の爪を失いたいか?」

「今度は足にするって言ったじゃないですか」

「どちらでもいい。爪だろうが眼球だろうが歯だろうが、どうせ明日には元通りだろう」

ぞっとした。また、ということは既に1度は実行されているということだ。思わず顔をしかめると柊暮人は目敏くそれに気づいて、「こいつらにお前の爪を1人1枚剝がさせようか? そっちの方が効果がありそうだ」とうっすら笑った。

「‥‥あぁ、確かにそれは困りますね。そんなことするくらいなら中将を殺そうとしそうだし」

「俺の心配か?」

「は? まさか。面白くもない冗談はやめてください」


柊暮人はおもむろに彼女の額を掴んで、ガン、と強かに背もたれへ叩きつけた。百夜は眉一つ動かさずに柊暮人を彼の白手袋越しに見上げている。

歌川や出水が息を吞んで身体を震わせるのを視界の隅で捉えるが、一瀬グレンが手で制した。動くなということだろう。



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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時

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