第226話 ページ46
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「その5人との関係は何だ?」
「知り合い、といったところですかね」
「嘘だな。ただの知人を同居させ、挙げ句1週間も世話をするか?」
「他に部屋がなかったんですよ」
「独房でも何でもある」
「私達に何の危害も加えていない人達を牢獄にぶち込むなんて理不尽でしょう。その理不尽振りかざす側のあなたに言っても仕方ないですが」
淡々と返答するAだが、その内容は、全く男に対して敬意があるようには思えない。男がいつ刀を抜くか大いに冷や冷やした。
「しらばっくれるのはやめろ。当時現場にいた者から、お前が1人の名前を呼んだことは聞いている。加え、お前は随分とそいつらのことを信頼しているようだ、ともな」
Aは何も答えない。表情も、驚くほど「無」だ。それほどまでに感情を削ぎ落とせるなんて、薄気味悪さすら感じてしまった。
「そいつらを庇ってもお前に得はない。正直に質問に答えろ。───大方、お前が4年間いたという世界の人間だろう」
「‥‥‥」
「ただの知人なら、尚更庇う必要はない。お前はそのくだらない4年と引きずっている情のせいで、自ら独房に入るつもりか?」
「‥‥人が必死に生きた時間をあなたの価値観で勝手に切り捨てないでもらえませんか。殺されたいんです?」
そのあまりに過激な言葉にぎょっとして思わずその横顔を見る。
にっこりと笑い、上辺は穏やかだ。しかし細められた目には確かな殺気が滾っていた。
男は怒るどころか、眉一つ動かさずAを見つめている。
「───ようやく、本音が出たな」
「高貴な柊さまのお耳に入れるには些か汚すぎましたね。失礼いたしました」
太刀川さんは頬を引きつらせ、歌川は冷や汗が止まっていない。菊地原は相変わらずだが、風間さんは鋭い目をさらに細めている。
この状況を真顔で眺めていられる方がおかしいくらい、ピリピリとした空気が漂っている。これはもう尋問ではないだろう、と思った。
「知人に多少の情が湧くのは人間として普通では? あなたにはわからない感情かもしれませんが」
「‥‥なるほど。百夜が柊を嫌っていることはよくわかった」
「今更ですか? ずっと前から、私は《柊家》が嫌いですよ。
でもあなたは私を殺さない。殺せない。なぜなら利用価値があるとわかっているから。ただ気に食わないだけで私を殺すほど、あなたは愚かではないでしょう?」
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夏向(プロフ) - るい酸性さん» 読み返していただきありがとうございます!6は現在改変中でして、土曜日中に全体公開する予定なのでもうしばらくお待ちください! (2023年2月11日 0時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
るい酸性(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!6のパスワード教えて欲しいです! (2023年2月10日 17時) (レス) @page49 id: 825df6404c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年9月7日 19時