・ ページ16
「どういうこと?延命治療...って...」
『うーん、君にはまだ話してなかったな。』
やつは悲しそうな笑顔で話してくれた。
『さすがにそろそろ体がきついんだ。悲鳴上げてるよ。』
腕で筋肉を見せるような素振りをした。
前ほどしっかりしていない。
痙攣のように震えていた。
あぁ、本当に死ぬんだ。
そう思った瞬間、涙がつたった。
『あらあらあらあらあら?そんな泣かないでよ!自分が泣かせたみたいじゃん!』
君が泣かせてるんだよ。
『良かったよ。』
「え?」
僕は鼻を啜った。
『自分が死ぬ時に泣いてくれる人がいてくれて。』
「...いつ?」
『お?』
「いつ辞めるの?延命治療。」
『うーん、年明けてからかな。やめてから1日くらいしか持たないかも。』
今つけてる点滴が、マスクが、やつの命綱なんだ。
『でもさ、』
『最後にたくさん笑うことが出来て嬉しかった。』
僕の涙は止まらなかった。
『大丈夫、きっと空は晴れるよ。』
「意味わかんないよ...それ。」
『まあまあ!ほら!看護師さんたちにケーキ渡してこいよ!』
バシバシと僕の背中を叩いて押し出した。
「痛いよ。」
僕はケーキを持って渋々と歩き出し、外へ出た。
「あの、これ。あいつに渡したんですが...」
看護師さんは全てを悟ったように受け取ってくれた。
看護師「聞いたの?」
「はい。」
看護師「そう。」
ケーキを渡してあいつの部屋に戻った。
扉に手をかけた時、一瞬躊躇った。
今ここで帰れば、やつが死んだ時...ほんの少しだけ悲しまなくていいのかもしれない。
このに入れば、またやつが恋しくなるかもしれない。
ギュッ
ピーーーーー!!!!!
「え...」
中から聞こえた警報のような音。
僕には命がとだえる音に聞こえた。
ガラッ
「あっ...あ...」
ベットに寝ているやつは...いや、光は
大量の血を吐いて倒れていた。
「嫌だ...嫌だ...光!!!」
僕は駆け寄った。
『あ...翔平...』
光が僕の名前を呼んだのはいつぶりだろうか。
いや、呼ばれたことなどあっただろうか。
『もうちょっと頑張ろうと...思ったけどさて...無理だった...』
光の手は冷たかった。
涙で前が上手く見えない。
『そんな泣くなよ...逝きにくいじゃん。』
苦しそうに笑った。
「行かないでよ...」
お願いします神様。
光を連れていかないで。最初で最後のわがままです。
光は泣いた。
『ごめんね...』
ピーーーーー...
15人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひかり | 作成日時:2020年12月6日 0時