2章 迫り来る時間 ページ13
『はぁ…この漫画も最後まで読めずに死ぬんだろうな。』
「そしたら僕が出る度にお供えに行ってあげるよ。」
『もうちょっとオブラートに包み込んで欲しいな?』
奴は相変わらず元気だった。
僕も行かないという選択肢を諦め、勉強道具を持っていきやつの病室でするようになった。
しかし集中は出来ない。だって邪魔してくるから。
『ねぇねぇ、それ何?』
「三平方の定理だよ。」
『うわ、吐き気する。』
頭悪いことを忘れていた。
「君は死ぬ前に少し勉強したらいいと思う。」
『なんで?死ぬんじゃん!もう勉強する意味なんてないよ!』
「意味は無いんだ元々。自分を作るための義務なんだよ。」
『なら尚更いいや。自分はもう自分を作れてるから。』
馬鹿だ。
勉強をしたくないオーラがよく分かる。
『うぅ…お前が勉強の話するからお腹痛くなったじゃん。トイレトイレー。』
バタンッ
「まったく…」
確かに
人は
もう死ぬとわかっていれば勉強をするだろうか。
好きな人はするかもしれないけど、嫌いな人は絶対しないだろうな。
死ぬ前くらいやりたいことやりたいもんな。
やれない人もいるんだろうけど。
ジャァァァァァァ…
『ふぅ!!スッキリスッキリ!』
お腹をパンパン叩いて出てきた。
『あ、そういえばさ…あ…』
バタッ
「え?」
やつは何か言いかけて
倒れた。
僕の頭の中は真っ白になったが体は動いた。
すぐにナースコールを押した。
「光!光!」
僕は何度も奴の名前を呼んだ。
奴は目を開けなかった。
すぐにナースさんたちが来てくれて、検査された。
・
僕はその夜、とても怖くて寝れなかった。
どうしてだろう。
死ぬってわかってるのに
どこかに望みをかけてしまう自分がいることに
怖くて寝れなかった。
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作者名:ひかり | 作成日時:2020年12月6日 0時