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『さて、帰ろうか。』
ネックレスを買い、奴は満足したらしい。
『また来ようね。ここね、毎年雛人形が飾られるんだって。』
『それまで生きてたらの話だけどね!』
奴は笑った。笑い事じゃないだろ。
「帰るんでしょ。僕も疲れたし帰りたい。」
『素直だなー。』
不貞腐れて、少し走って僕の前に立った。
『一緒に見に行こう。雛人形。』
奴は女なのかと、一瞬疑った。ひな祭りは少女のための祭りと聞いたことがある。
でも、やつの笑顔はイタズラに笑っていて。
まるで、悪さをする前の少年のようだった。
ほんとに不思議なやつだ。
・
時が流れて、それも昔の話。
夏が終わり、秋へ入ろうとしていた。
本格的に受験勉強もすることになり、やつに会う機会は減った。
だから…少ししか合わないから、変化に気づいた。
日がすぎる事に、点滴の数。付けられているよく分からない機会が増えていること。
「こんにちは。」
『あ!受験生!よく来た!』
奴は読んでる本を閉じた。何故かベットから降りない。
いつも飛びつく勢いで迫ってくるくせに。
「体調よくないの?」
僕は聞いた。
奴は少し黙ってぱっと笑った。
『元々良くないさ!親が心配症だからさ、できることは全部するって!どうせ死ぬのに!』
そうか。そういうことか。
『明日も晴れるといいな。』
奴は外を睨んだ。
木枯らしが吹いてる外は寒そうだ。
晴れているが、雲が若干多い。
『室内って嫌だよね。』
「そう?僕は好きだよ、快適で。」
『なんにも苦労しない。守られてるだけ。』
「詩的な表現だの。」
『やばい…詩人になれる?』
「そう簡単になれたら苦労しないよ。」
『それもそっか!』
豪快に笑う。
こいつはよく笑うな。
うるさくは無いけど、動作がうるさい。手を叩く。だから結局うるさいんだ。
『そんで受験勉強はどうだい?』
「忙しいよ。本当は来たくなかった。」
『ツンデレだね☆』
「なわけないよ。」
ウインクしたいんだろうけど、出来てない。
『大丈夫、きっと晴れるよ。』
奴はまた笑った。
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作者名:ひかり | 作成日時:2020年12月6日 0時