〖TOP4〗Dearest.〖短編集〗

Puzzle.[ky] ページ6

「Aー！今日帰りにパフェ食べに行かね？｣

「今勉強中なので邪魔しないでください」






話しかければ分かりやすく眉間にシワをよせて、こちらに見向きもせずに淡々と数式を解いていく。
いつだって冷静沈着な彼女は、俺がどんなにデートに誘っても振り向かない。






「あーあ、また断られちゃったよー｣






誰にも媚びない。誰にも染まらない。
簡単に解けないパズルみたいな君が好き。







「私じゃなくても他にいるでしょう。キヨさんなら女の子も二つ返事でついて行きますよ｣

「てことは俺カッコイイってこと！？」







ピタッと手が止まる。
ここでやっと目が合って、澄んだ瞳が俺を映す。
少しムッとしたような顔をして、また数式を解き始めた。
心做しか、文字が乱暴になっている。






「そうですね。カッコイイキヨさんにはかわいい女の子がお似合いです｣

「じゃあ俺とAはお似合いじゃん｣

「…私は可愛くないです。やめてくださいそういうの｣






Aはいつも自信が無いみたいだけど、ほかの男子からも狙われてるのを知らない。
俺が焦ってることも。





「そんな事ない、Aは可愛いもん｣

「可愛くないです｣

「可愛いよ。素直じゃないとこも、俺の事邪魔とか言いながら無視しないとこも、本当は甘いもの好きなのがバレバレってとこも。全部可愛い｣






無表情なのは変わりないが、耳が真っ赤になっていく。照れた時に前髪をいじるくせがあるのはもう分かってるから隠さなくてもいいのに。






「そんなので…｣

「ん？」

「そんなので私！キヨさんのこと好きになったりしないので！｣

「お、宣言されちゃった！」





すごい勢いで分厚い教科書を閉じて、ノートや文房具を鞄に詰め込んでいくA。
いつも丁寧に入れてるのに、ここまで動揺するとは…






「も、もう！家で勉強します！｣

「えー、帰んのー？パフェは行かない？｣

「うう〜…帰ります！ばか！こんな女早く諦めてください！｣






最後に見た君の顔は少し涙目で、ついに顔まで赤くしていて。
分かってないなあ、全く。
そういうとこが可愛いのに。






「ん〜、明日はどうやって誘うかな〜♪｣






俺は諦めたりしないよ。
俺が絶対、一番最初にパズルを解くんだ。

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