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薄暗くしたベッドの上。
ホックを外すために背中に当たった手ですらも私の肩をぴくりと揺らした。
そんな私を見て、小芭内はふっと吹き出す。
「緊張しすぎだろう。もう何度目かもわからないのに」
「だってぇ…」
今からまた私は彼の手によってぐずぐすになるのだと思うと下半身がきゅんと鳴るとともに、反射的に涙が出てしまう。もう泣き虫なのは認めよう。
「ぎゅうして」
余裕がなくなる前に、と腕を前に出すと、それを引き寄せられて上半身の肌同士がぴとりとくっつく。この温もりが好き。
なだらかに筋肉の浮き上がる胸板に手のひらを這わすと、「今日はやけに積極的だな」と少し嬉しそうにしている。
「私だって、小芭内の余裕ない顔見たいもん」
「そうか?ない時の方が多いつもりだが」
「うそつき。小芭内はいつも余裕綽々じゃん」
小芭内の腿の上まで抱き寄せられて、私の顔は彼よりも少し高いところに来た。そのまま吸い寄せられるように唇同士が重なる。
「っ…ふ、」
前よりも少し、舌を受け入れるのが上手くなった気がする。大人しく彼の動きに従って力を抜くことを覚えた。
長い口付けの最中、少し冷えた指先が耳の縁に触れた。下から上に撫でるようになぞられて、背中に甘い電流が流れる。
「んっ…ぁ……みみ、さわらないで」
小芭内と付き合い始めて気づいたことだけれど、どうも私は耳が弱いらしい。
私の反応を楽しむように、耳にふっと息をふきかけてくるから、全身がびくりと反応してしまう。
「触って欲しいの間違いだろ」
「まって…や、」
ちゅ、ちゅ、と首元から這い上がるようにして耳元まで到達すると、舌でそこをなぞった。
「〜っ、!」
声にならない声で悶えていると、ふいにはむっと唇で食まれて「やっ、」と情けない音が漏れる。
「ん、ぅ……や、だめ…」
太もものあたりに手を添えながら、本当に愛おしいものを見る目がまつ毛の下から覗く。
だめ、と言ったところでやめないのは、もうそれがゴーサインだと知っているからで。
「だめなのか?」と勝ち誇ったような笑みを浮かべ、黙り込む私を満足気に見上げる。
「綺麗だな、A」
そう言われてしまうと、もう許さざるを得ない。首元や鎖骨に顔を填めて、ちゅるりと蛇の甘噛みのように痕を残すのを。
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和加 - 声出して笑ってしまうんですが。面白すぎです笑 (2021年2月3日 6時) (レス) id: 263e001d98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
モブちゃん - キャァァァァァァ!キュンキュンするわ!伊黒さん、お幸せに! (2020年12月25日 7時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
みゆきだいふく(プロフ) - 深紅さん» すみません爆笑しましたwwwwwww (2020年12月23日 21時) (レス) id: a48323ed49 (このIDを非表示/違反報告)
深紅(プロフ) - 私の中でLove so sweetが流れた (2020年12月23日 20時) (レス) id: 1de38023e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆきだいふく | 作成日時:2020年12月2日 1時