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「お前は本当にうるさいな、うるさいにも程がある。次に叫んだら今度こそあの窓から投げるからな」

「ヤダ死んじゃう!!」


先程まで私たちの間に漂っていた甘い雰囲気は私の大声のせいでどこかへ逃げていった。

けれども、口から出そうな程にせり上がる心臓の音をかき消すのにはまだ足りない。

どうせ真っ赤になっているであろう頬を隠すように顔を覆う。

こんなに真っ直ぐな告白を受けたのは初めてで、未知の感情が時差でじわじわと侵食してくる。


「さっきの返事だが、今すぐでなくていい。じっくりとよく考えてから……」

「いやだ。今する」


放っておいたら、彼はまた自身を言葉で落とす気がして遮った。


「私はいますぐなりたいんだもん」

「……何にだ」

「わからないの?」


どうしても自覚させたかった。自分がどれだけ想われているか。

左右の色のその奥。臙脂の広がるような痛くて深い闇の底に一番に光を灯したかったのは私だ。

胸を高鳴らせながら、小芭内が何度もしてくれたみたいに、そこに唇を重ねた。

伝わってよ。汲み取ってよ。
この両手からこぼれ落ちるほどの好きを。


「私を彼女にしてください」


言い終わった後、ピントが合った時には、小芭内の顔は耳までほんのりと赤くなっていた。お酒を飲んですら紅潮なんてしない頬なのに。

こんな顔、初めて見たかもしれない。


「だめですか」


答えなんかわかってる。それでも、聞きたいんだ。小芭内の口から。


「だめなわけ、ないだろう」


片腕で口元を覆って赤面を隠すのを見た時、なんだか底なしの沼に片足を突っ込んだ気がした。


「ねぇ顔赤いよ?」

「誰のせいだ」

「んー、すき!」


思わずがばっと抱きついてしまう。

あんなに言えない言えないと悶着を起こしていた想いが次々と言葉になって口から飛びててくる。


「ねぇねぇすき。おばないは?」

「お前はどうしてこうも情緒が安定しないんだ。さっきあれほど言っただろう」

「えーわすれた。もう1回言って」


小芭内は、呆れたようにため息を着いてから、照れを含んだ声で言った。


「好きだ」




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和加 - 声出して笑ってしまうんですが。面白すぎです笑 (2021年2月3日 6時) (レス) id: 263e001d98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
モブちゃん - キャァァァァァァ!キュンキュンするわ!伊黒さん、お幸せに! (2020年12月25日 7時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
みゆきだいふく(プロフ) - 深紅さん» すみません爆笑しましたwwwwwww (2020年12月23日 21時) (レス) id: a48323ed49 (このIDを非表示/違反報告)
深紅(プロフ) - 私の中でLove so sweetが流れた (2020年12月23日 20時) (レス) id: 1de38023e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みゆきだいふく | 作成日時:2020年12月2日 1時

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