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「前にAが見たいと言っていた映画のチケットが取れたから、一緒にどうかと思ってな」
え、うそ。
それって私のために…?
「俺とが嫌なら2枚ともお前にやってもいい。生物の胡蝶先生とでも……」
「嫌なわけないでしょ!」
私の大きな声に面食らったのか、小芭内はパチパチと切れ長の目を瞬きさせた。
「絶対小芭内と行く、小芭内がいいもん!」
「え、あ……」
「うへへ、2人で約束して出かけるのなんか数年ぶりだねぇ」
嬉しい嬉しい。
とりあえず嬉しい。
私が抑えきれずに1人でニヤニヤしていると、小芭内は片手で顔を抑えて下を向いた。
何か、変なことでも言っただろうか。
「小芭内……?」
「A、違うんだ俺は」
やっとこっちを見たその頬は、ほんの少しだけ赤い気がした。
なんか、かわいいんだけど。
マスクしてないと色んな表情が見れるなぁ。
ありがとうコーヒー。ありがとうマグカップ。
先程のセリフに対してどういう事かと聞くのも忘れて、心の中で謎の感謝を述べていた時だった。
突然手首を掴まれて、私の上半身は小芭内の方に傾く。
どうしたの、なんて言う暇もなかった。
その前に、私の口は彼によって塞がれたから。
ドキン、ドキン、と大きく高鳴っていく心臓。
触れるだけなのに、今日のは長い。
そして今までのより、ずっと優しい。
それが離れた時、私はどんな顔をしていたのだろう。
きっと目も当てられないほどに赤く染っていたと思う。
小芭内の目がまっすぐに私を捉えた。
逸らさせない、絶対に。とでも言うように。
「こういうつもりだと思って欲しい」
「こういうつもりって……?」
「それは、」
ガチャり、と準備室のドアが開く音がした。
私たちは弾かれたようにそちらを振り返る。
「あらあら、逢瀬の最中でしたか。失礼しました」
「胡蝶…!これはちが」
「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ?私、口は堅いほうですから。それではまた日を改めて」
ニコニコと音がしそうなほどの笑みを浮かべながらぱたりとドアを閉めた。
「い、今の、3年の胡蝶しのぶちゃん……」
「ああ、そうだ」
「やばいかな」
「確実にな」
そんな○のような出来事は、私に大事なことを忘れさせた。
「それは、」の続き、まだ聞いてない。
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和加 - 声出して笑ってしまうんですが。面白すぎです笑 (2021年2月3日 6時) (レス) id: 263e001d98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
モブちゃん - キャァァァァァァ!キュンキュンするわ!伊黒さん、お幸せに! (2020年12月25日 7時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
みゆきだいふく(プロフ) - 深紅さん» すみません爆笑しましたwwwwwww (2020年12月23日 21時) (レス) id: a48323ed49 (このIDを非表示/違反報告)
深紅(プロフ) - 私の中でLove so sweetが流れた (2020年12月23日 20時) (レス) id: 1de38023e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆきだいふく | 作成日時:2020年12月2日 1時