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彼女は顔は整っていたし、体つきも大抵の男が好みそうなものだった。

けれども、俺に残ったのはA以外の女で知らない感覚を知ってしまったということだけ。

俺の下で乱れる女の姿を見た。
相反する心と体に戸惑った。

ただ、呆然と目を瞑った。



A、俺は浅ましい男だから、
大人になるにつれて何度も想像したよ。

君の肌はどれくらい柔くて、かかる吐息はどれくらい熱いのだろう。
どんな風に俺の名前を呼んで、どこで1番感じるのだろう。

最低だ。そんなことはわかってる。

でも、お願いだ。
1度でいいから夢を見させてくれないか。



「っ…A…!」



その瞬間、俺は自分が世界一醜い男に見えた。


事が終わったあとも、名前を違えたことに関しては何も咎められなかった。
それ以前に、俺たちは互いの名前すら交わしていなかったのだ。

それだけが、唯一の救いだった。



「お兄さんそこそこ遊んでるでしょ」

「……は?」

「気絶するかと思った。今まで出会った男の中で1番上手いよ、びっくり」



タバコをふかしながら衝撃的なことを口にする彼女。
何を取り違えているんだ、としか思わなかった。



「初めてなんだが」



「……え」



名前も知らない彼女は一瞬固まると、「うそ」と零した。



「それ、やばいよ。私、多分まだもの分かりがいい方だと思うけど、もしもうちょっとメンヘラだったら……」

「なんだ」

「死ぬまで追いかけ回されると思う」



何を言ってるんだこいつは。そんなわけがあるか。



「次に抱く子は結婚を決めた子にした方がいいと思う。そうでないと、人のめちゃくちゃにするかもよ」



驚いた拍子に、脱ぎ捨ててあった彼女の花柄のスカートの上に灰皿を盛大に落としたことでその話は終わりになった。

そして、自称物分りのいい女自身ともその日限りで終わった。

お互いに名前も知らないまま。


その後も、Aはどこぞの馬の骨かもしれない男と付き合って別れるを繰り返した。

「彼氏出来たの〜」とかいう聞き飽きたセリフが出た日に限って俺は軟派にあったしそれを断らなかった。

それなりに女が喜ぶ口説き文句も覚えた。
Aに使ったことは1度もなかったが。



『人の人生めちゃくちゃにするかもよ』



その意味が分かったのは。21の秋。
俺は、所謂ストーカー被害にあった。




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和加 - 声出して笑ってしまうんですが。面白すぎです笑 (2021年2月3日 6時) (レス) id: 263e001d98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
モブちゃん - キャァァァァァァ!キュンキュンするわ!伊黒さん、お幸せに! (2020年12月25日 7時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
みゆきだいふく(プロフ) - 深紅さん» すみません爆笑しましたwwwwwww (2020年12月23日 21時) (レス) id: a48323ed49 (このIDを非表示/違反報告)
深紅(プロフ) - 私の中でLove so sweetが流れた (2020年12月23日 20時) (レス) id: 1de38023e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みゆきだいふく | 作成日時:2020年12月2日 1時

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