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「死にたい」
伊黒が本日50数回目の深いため息をついた。
珍しく相談があるというから呼び出されてやったものの、ずーんと効果音が聞こえそうな程にわかりやすく落ち込んでいて話にならない。
本当、分かりやすいやつ。
「またそんなこと言ってんのかァ?いい加減元気だせって、アイツもそんなに気にしてなさそうだろォが」
「気にしているとかいないとかそういう問題ではない。そもそも、酒の勢いだけで女を抱くなど言語道断、強 姦も同然だ。本来なら死んで詫びても足りないところなのに、Aは優しすぎる……」
よく喋る昆布だな。
今度は俺がため息をつく番だった。
「お前な、なーにが酒の勢い“だけ”だァ?」
痛いところをつかれたかのように、伊黒の肩がぴくっと揺れた。
気づいていないとでも思ったか。
「そらなぁ、好きな女にんなこと言われたら、誰だってそうなるだろ。いつでも押し倒せるような状況でよォ、抱いて下さいって言ってるようなもんだと思うぜ?我妻も我妻で無自覚過ぎんだろォが」
「やめろ、Aを責めるな」
「お前が言うか」
毎日あいつに罵詈雑言浴びせてるのはどこのどいつだよ。
「直球が無理ならじわじわアピールしてみろって。あっちも多分お前のことそれなりに意識してんぞ」
「それは断じてない。なぜならあいつはこの間、煉獄と一緒に愛の告白の練習をしていた。一体あれは誰宛てなんだ」
どう考えてもお前だろうよ。
というかその前にあいつら何してんだ。
運ばれてきた餃子には一切手をつけないまま、酒だけをずっとちびちび飲んでいる。
「Aは誰よりも努力家なんだ。俺と違って愛想も社交性も、そして人を笑顔にする能力をも持ち合わせている。あんなに朗らかに笑うひまわりのような女と俺が釣り合うはずがない、第一……」
「あーあー、もうわかったって。お前が我妻のことが大好きなのはよーくわかった」
聞いていて恥ずかしくなるほどの口説き文句を俺の前ではペラペラと喋るくせして、どうして本人に言えないんだ。
「んなこと言うならなァ、一旦想像してみろよ、例えば……そうだな、冨岡だな。もし冨岡がアイツと接吻でも溶かしてたらどうするか考えてみろ」
「殺す」
「おま、グラス割れんぞ!!例え話だろォが!!」
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和加 - 声出して笑ってしまうんですが。面白すぎです笑 (2021年2月3日 6時) (レス) id: 263e001d98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
モブちゃん - キャァァァァァァ!キュンキュンするわ!伊黒さん、お幸せに! (2020年12月25日 7時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
みゆきだいふく(プロフ) - 深紅さん» すみません爆笑しましたwwwwwww (2020年12月23日 21時) (レス) id: a48323ed49 (このIDを非表示/違反報告)
深紅(プロフ) - 私の中でLove so sweetが流れた (2020年12月23日 20時) (レス) id: 1de38023e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆきだいふく | 作成日時:2020年12月2日 1時