私と〇〇できないくせに！【伊黒小芭内】

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「おろしていたら暑いだろうと気遣ってくれた女子生徒からもらったものだが、必要ないくらいの気温になったな」


はやいものだ、などとよく分からないことを言いながら手首につけていたそれを外して私の眼前にぶら下げた。

目の前で、風に吹かれて控えめに揺れる透き通った飾りと黒い輪っか。



「なるほど、お前はこういうのが好きなのか」

「な、な…」

「確かに可愛らしいデザインではあるな」



まってどういうこと？
そんなに人からの好意に疎いことある？

しかも女子生徒からもらったのかよ！？
なんかよくわかんないけどめっちゃむかつく！！！



「ちがうし！！そんなゴムいらないから！？小芭内のばか！！すけべ！どんかん！へんたい！！」

「へんた……」



すごい、逆にすごいよ小芭内。

この流れでヘアゴムの話だと思う人、日本に多くて3人ぐらいだよ。

後ろから、「待て」とか「A」とか聞こえたけど、絶対待ってなんかやらないんだから。

っていうかこれいらないとか言って奪ってきちゃったし！？





いつの間にかぎりりと噛んでいた唇から薄く血の味がして立ち止まる。


だめ、泣きそう。



「……返しなさいよ」



ヘアゴムのことじゃない。
返して欲しいのは私の勇気。




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