#218【参る】 ページ28
NOside
「ゲホッ」
《びちゃびちゃ》
口から溢れ出る血を吐き出し、コサメは柳下を目の前に再び構える。包帯やガーゼだらけの柳下だが、“野狐”に関係あるなら黙ってはいられない。
「何度言えば分かる
“野狐”は死んだ」
「ならその証拠を出せ、ラクさまをクインケにしたのだろう」
ピクリと柳下の眉が動き、コサメは何か隠していると察し強く睨み付ける。
「“野狐”の赫包は
「はァ!?それでボクが納得するとでも!?」
右腕に纏った羽赫を柳下に向かって打つが簡単に跳ね返された。コブとコウが居れば少しは結果が良い方だったかもしれないが、影乃の事でいっぱいのコサメには考えつかなかった。
「最後に言い残した事はないか」
何度も“喰種”と戦った柳下には分かる、コサメが長くない事を。脇腹は抉られ、左腕は普通なら曲がらぬ方向に曲がっている。顔は狐の面を付けており、右側は割られ血が垂れている。
「ボクをラクさまのお傍に置いてくれないか
・・・・・・出来れば、クインケにはなりたくない」
コサメも己の死を感じているのか素直に口を開く。
「・・・確かに」
柳下の了承に「なんてお節介な“白鳩”だろう」と思いながらフッと笑う。
「礼を言う」
本当は殺されるなら影乃の赫包で死にたかった。影乃が居ないならせめて傍に居たい。
(今・・・そちらに参ります・・・・・・Aさま)
身体が倒れ、どんよりとした雲からポツポツと雨が降り出した。
己の最後に素晴らしいと思い、口に笑みが浮かぶ。
はえーな、もう来たのかよ
(これは・・・ボクの幻聴か?)
例え己の自己満足でも良い、貴方の声が聞こえれば。
後日、コサメを解剖し赫包を探したが見つからなかった。コサメの表情は静かに微笑み、この世に満足したような顔だった。
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水無月(プロフ) - 乾さん» 今更になってしまいますがありがとうございます!一時期題名が落ち着かない時がありましたが最後まで読んでいただきありがとうございました!! (2018年8月10日 23時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
乾 - 完結おめでとうございます!!この作品は、名前が何度か変わっていましたがそんな連載当時から好きでした。素敵な作品をありがとうございました (2018年7月2日 18時) (レス) id: de2fb18392 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 瑠伊さん» ありがとうございます!素敵と言ってもらえてとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 慶さん» ありがとうございます!面白いと感じてもらえてとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 宮野 ミヤさん» ありがとうございます!気に入ってもらえとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無月 | 作成日時:2017年12月27日 18時