≠ ぱられる 2

・・・・ ページ26

⇒






自嘲気味に笑う渡辺さん
話を聞いているだけでも私は辛くなっていた











「あの、さっきの私の話聞いていました？パラレルワールドの、」







「多分、私その方のパラレルワールドの姿です。」














信じてもらえるはずがないのは分かっている

だけど、それでも
何故か嘘を言うのは嫌で






こんなことを言っても彼の救いにはならない


彼は私ではなく、こちらの世界の私を求めているんだ






私のやっていることは無駄



でもどうしても、何かしらの形で助けになりたかった















渡辺「ひとつだけ、いいですか？」








パラレルワールドの話は納得したのか分からない

それでも彼はまた悲しげに笑った





















渡辺「彼女とは別れも言えずに離れ離れになったんです。

不躾なことを言っているのは分かっています、ただ、最後に」












膝に置いていた手に、彼の手が重なる
















渡辺「最後にあなたをAとして抱きしめさせてください、」














さっきの目だ
何かに縋るようなあの瞳














「……いいですよ」














パラレルワールドと現実の世界は思わぬ所でリンクしている


大我様が樹さんに異様に執着していたことも
岩本さんと深澤さんが仲が良かったことも




そして、今の私は彼のことをとても愛していた

好きとかではなく、守りたいという愛情
きっとこちらの私はよほど渡辺さんのことを愛していたんだと思う




その気持ちが一瞬だけリンクした気がした















「彼女さん、渡辺さんのことは何て呼んでいたんですか？」


渡辺「……翔太って、呼ばれていました。」












過去を懐かしむその言い方
思い出の中のAさんに、そっと私を重ねているのだろう

















「翔太。ほら、おいで？」








腕を広げて、彼に呼びかける


彼の目が私を捕えた

その瞬間 目からは大粒の涙が溢れ出し、言葉にならない声をあげる


















渡辺「会いたかった、、、ずっと、会いたかった、」









.

・・・・・→←・・・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す