上級生の紅一点は、無愛想。《第一章》【RKRN】 (ページ7)

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五「委員会争奪戦」ページ7

【主side】

『伊作』

私は医務室の扉を開けて同級の名前を呼んだ。

奥から出てきた彼は私達を見て目を見開き、早く中に入るように言った。

新入生の治療が一通り終わった頃
本来ならこのままくのたま長屋に帰るのだが、何故か私は伊作の前で正座させられていた。

(これじゃあまるで説教されるみたいじゃないか)

私は伊作の顔をチラッと見た。

伊作「それで…何で新入生がこんなにボロボロになってるのか……しっかり説明してね？Aちゃん？？」

(“みたい”じゃなかった……)

伊作の黒い笑顔に私は動悸が止まらなかった。

『その……去年くの一教室で歓迎会があったでしょう？それを今年もやったんです……』

ピシッ

『ヒｪｯ』

さっきのは伊作の持っていた湯呑みにヒビが入った音である。それ程までに彼は今お冠なのだ。

伊作「なんで止めなかったの？去年も凄い被害だったよね？寧ろ去年以上なんだけど」

『申し訳ございません』

私は綺麗な土下座で謝罪した。
でも、伊作の怒りがこんなもので鎮まるわけがない。

私が恐怖に震えていると、ふふっと小さい笑い声がした。

顔を上げるとさっきの怖い笑顔の伊作ではなく、いつもの可愛らしい笑顔に戻っていた。

驚いた。どうやら許してくれたようだ。

『ああ、良かった。許す条件に無理難題を言われたらどうしよかと思いました……』

伊作「僕もそこまで鬼にはならないよ。でも、何も無しっていうのもあれだから……これにサインくれない？」

サインするだけで許してもらえるんだったらお安い御用だ。幾らでも書く。

はい、と伊作から手渡されたのは一枚の紙

内容を見ると、

【これにサインした者を保健委員会の一員と認める】

『あ…………』

なるほど、察した。

『……もうそんな時期ですか』

前言撤回、サインは絶対しない。
少なくともコレには。

『ごめんなさい無理です』

伊作「えええ？！！保健委員会は上級生が僕だけしかいないからAちゃんが入ってくれないと困るんだよお」

捨てられた子犬の様な潤んだ瞳で見つめられたが、出来ないものは出来ないのだ。

『今年はどの委員会にも入らない予定なので』

そして私は医務室の戸の引手に手をかけた。

どの委員会も人手不足で困窮している。

そのため各委員会は、委員会参加自由の私をなんとしても引き入れようと、毎年毎年色々と仕掛けてくるのだ。

毎年恒例、争奪戦の幕開けである。