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『いえ、それは勘違いです』
ユキ「先輩見なかったんですか?土井先生のあの照れた顔!あれが証拠じゃないですか!」
確かに少し顔が赤い様にも見えたが、あれは照れからくるものではない。だって、私は何も仕掛けていないから。
そんな時、ふと私に悪い考えが浮かんだ。
(このままにしておけば難を逃れられるんじゃないか?)
くのたま達の勘違いはこの状況において寧ろ好都合
先生には悪いが、黙っておけば私は助かるのだ。
(くの一なんだから、使えるものは使わなきゃ)
私はこの状況を利用することにした。
私はそのお陰で、歓迎会を真面目にやらなかったことをバレることなく無事終えることができた。
内心本当にヒヤヒヤしていたが、何とか乗り越えられたことに胸を撫で下ろした。
そして私と土井先生はボロボロになった新入生達をおぶって、医務室へと向かったのだった。
『土井先生、さっき……』
土井「ん?何だ?」
『…………いえ、やっぱり何でもありません』
私は先生にさっきの事について謝ろうかと思ったが、本人は何も知らないのだから黙っていても良いだろうと、言いかけてやめた。
隣で「そうか」と言って、いつもと変わらない笑みを浮かべた土井先生を見て、私は少し申し訳ない気持ちになった。
春だというのに少しばかり暑い。
気候に助けられたな、と私は空を見上げた。
_____
【土井半助side】
くのたまのユキに指摘されて知ったが、私は照れた様な表情をしていたらしい。
その理由が、
《先生の様な理想の旦那さん》
彼女の言ったそんな何気ない一言を思い出して悦に浸っていたからだなんて口が裂けても言えない。
だからAが理由を聞こうとしなかったことに内心安堵していた。
新入生をおぶって隣を歩く彼女はいつも通りの仏頂面で、他人はよくそれを見て無愛想な女だと言う。
世の中の男達はいつも笑顔を絶やさずに自分の三歩後ろをついてくる様な女性を好む。
根っからの無愛想で、控えめで淑やかかと思えば意外と男勝りな性格の彼女とは真逆だ。
でも、そんな彼女が愛おしいと感じる時がある。
身体の内側があたたかくなっていく様な感覚になるのは、多分彼女が自分にとってとても大切で、生徒以上の存在なのだということを示していた。
しかし、私はその気持ちに蓋をした。
教師が生徒に想いを寄せるなど、あってはならない。
私はまた自分の心を掻き消す様に笑った。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時