四十六 ページ48
「ヒェッ」
Aを見て、男の一人が小さく怯えた声を出すと男達は手裏剣が刺さったまま一目散に走って逃げて行った。
まあでも少し気の毒にも思う。Aの殺気は何度か感じた事があるが、未だに怖気付いてしまう時がある。初見ではかなり怖かっただろう。
『すみません。留子さんが化粧直しなんて怪しいと思い、つけて来たんです』
Aは屋根から飛び降りてからそう言った。
(人気が少なかったから見られずに済んだが、もし一般人に見られていたらどうするつもりだったんだ……)
俺は、はぁ……とため息をついた。
留「そんなことより……もうちょっと確実に狙って打ってもらえないかしら!?」
俺の足元の地面には複数の手裏剣が突き刺さっている。
幾らお前が手裏剣のコントロールが上手いから俺には刺さらないって分かっていてもこれは流石にビビる。
『以後気を付けます』
留「あと、さっき手裏剣刺さったまま逃げられたが、アレって学園の物だよな?アレの補充に予算使うのは用具委員会なんだぞ?」
『留子さん、口調』
興奮して口調が戻ってしまっていた事に気付いて あっ、と手を口にやった。
くっそ、話の腰を折られた。
これがわざとかわざとじゃないのか分からないが、いつもこの様な調子で俺も叱る気が失せてしまう。
俺は額に手を置いて俯き、また深いため息をついた。
その時 ふふっ、とAから笑い声が聞こえた気がした。
こんな事は滅多に無い。いや、今までも無かった気がする。
此奴が笑うのなんて旨い菓子食ってる時にたまにくらいだ。
俺は急いで顔を上げたが、目の前にはいつもの仏頂面のAがいた。
『ほら、行きますよ』
そしてまた手を差し出された。
その行動に、さっきの騒ぎでいい具合に引いてきていた頬の熱が徐々にぶり返してくる。
だが、俺はAと手を繋ぐ事を選んだ。
一度は断ってしまったAの手に自分の手を重ねると一気にまた熱が顔に集中してきた。
しかし、さっきは少し不愉快に感じていた頬の熱も今は何故か心地良く感じていた。
_____
【主side】
私は留三郎と手を繋いで、ある場所に向かっていた。そこは甘味処に入る前に見つけた店だった。
店内には数多くの櫛や紅などが並んでいる。
お客さんは女性が多いと思っていたが、割と男性客の率も高い様だ。贈り物なのだろう。
私は店に入るとすぐに、ある商品が目に留まった。
それは、透き通った瑠璃色の硝子の玉簪だった。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時