四十五 ページ47
【留三郎side】
(…………凄く、恥ずかしかった)
甘味処での出来事がまだ頭から離れない。
頬の熱も引き切らないままに店から出てきてしまった所為か、まともにAの顔を見る事も出来ず、繋ごうと差し出された手を断った。
そしてAには少し化粧を直すから先に店に行っておいてもらう様に伝えて別れ、今は人気の少ない細道で建物の壁にもたれかかっている。
(くっそ……なんであれしきのことでこんなに恥ずかしくなってんだ俺は)
今までだって何度か経験はあったし、耐性だってあった筈だ。なのに何でこんなにも……
それが理解できなくて、解らないことにまたムカついて、俺はモヤモヤとしたまま下を向いていた。
その時、目の前で人影が止まった。
顔を上げるとそこには人相の悪い男が立っていた。
「随分と背の高い姉ちゃんだなぁ。でも…… 顔はまあまあの美人さんじゃねぇの」
留「いきなり何?」
「姉ちゃんちょいと一緒に来ねぇか?茶でも奢るぜ?」
留「結構よ」
「まあ、そう言うなって……」
面倒くさいナンパ野郎に絡まれたな、と思っていたら其奴は懐から短刀を取り出した。
逃げようと構えたがもう遅く、周りも其奴の仲間らしき人間共に囲まれていた。
「さあ、姉ちゃん……大人しく付いてきてもらおうか」
なるほど、こりゃ新手の人攫いだな。
最初は実習の一環かとも思ったが、短刀は偽物ではないし、ただの実習にこんなに人を使う筈がない。
(どうやら面倒事に巻き込まれたみたいだな……)
ここから逃げ切るには此奴ら全員を倒すのが一番手っ取り早い。
そう考えたが、その振る舞いは明らかに女子らしくないものになる。
それが実習に影響するのかどうかがわからないため、下手に行動できない事に気づいた。
だからと言ってこのままでは実習自体中止になるだろう。
そしてもし文次郎達の方だけが合格なんてことになれば、俺がアイツに嘲笑われるのは目に見えている。そんな事は断じて許さない。
(ここで減点されても、こっからまた巻き返せば良い)
拳を握り締め、殴りかかろうと考えた。
その時、目の前にいる悪漢の後ろの方から沢山の手裏剣が飛んできた。
手裏剣は男達の脚や腕に次々と突き刺さり、その痛みと衝撃でその場にバタバタと倒れ込んでいく。
『すみません。彼女、僕の連れなんです』
遠くから聞き覚えのある声がしたかと思うと屋根の上で手裏剣を構えて立っているAの姿があった。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時