四十四 ページ46
私達の机には羊羹が二人分だけでなく、団子が数本乗った皿が置かれた。
間違えられてしまったのだろうか。
『すみません。これ頼んでませんよ』
そう言うとさっき品を持って来てくれた店員さんがニコニコと笑顔で駆け寄って来ると私に囁いた。
《これウチからのサービスだから!良かったら食べてね!逢引頑張りな!》コソッ
『いや、そんな悪いですよ……』
そう言う私の背中をポンッと叩くと、店員さんは店の裏へと入っていってしまった。
此処の店主の奥さんなのだろうか。あんな良い人を騙してしまったのだと思うと些か良心が痛む。
しかし折角ここまでして頂いた物を拒むのも気が引けるので、ありがたく頂くことにした。
羊羹も団子もとても美味しくて二人とも食べてしまうのはすぐだった。
そして机に残ったのは団子の最後の一本
二人とも同じ本数を食べたので、留三郎は甘味が好きな私に「やるよ」とでも言うように顎を少しクイッと前に出した。
私はそれに甘えて最後の串を手に取り、口に運ぼうとしたが、口に入れる寸前で少し考えた。
何故この団子の本数は奇数だったのだろうか。
二人で来ているのだからサービスするのだとしたら分けやすい偶数にしてくれても良い筈だ。
そして私は気づいてしまった。
(……もしやこれは奥さんの粋な計らいでは!?)
ここは、前にシナ先生にやられた事がある《あーん》をするべきなんじゃないのか?
いつもの町でも恋仲の男女でよく見られる光景である。
決して今の私達がやっても不思議ではないし、いや寧ろこの実習では加点される可能性すらある。
(ごめんな留三郎…成績のために我慢してくれ)
『留子さん。あーん』
私が団子を留三郎の方に差し出すと、留三郎は一瞬ポカンと固まってから数秒後、耳まで真っ赤になった。
(え、一体何故に……?)
『……あ、嫌だったら良いですけど』
留「いや違ッ!べ、別に嫌なわけじゃないわよ……」
そう言うと留三郎は団子を口に含んだ。
私の方が背が低く、座高も低いからか留三郎の口よりも結構下の方に差し出してしまった団子
それを食べるためには、少し前に屈まなくてはならない。
今の目線はというと、少し私より留三郎の方が下くらいだ。だからなのだろうか。
留三郎が上目遣いで此方の目を見てくる。
食べるのに邪魔な横髪を耳に掛ける動作と赤みを帯びた頬と上目遣い。
何故だろう、見てはいけない物を見てしまった気がする。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時