四十三 ページ45
【主side】
私達は時々店の中を覗いたりしながら町を見て回った。
そして、歩くたびにチラチラと多くの視線を感じた。
まあ、それも仕方がないことだ。
何せ私の様な髪色をしている人間なんて、そうそういるものじゃないだろう。
私達が実習にいつもより遠くの町を選んだのもそれが理由だ。
こんな髪色をしている人間なんて町で私しかいないものだから、簡単に正体がバレてしまう。
本当は鬘があれば一番良いのだが、私はそんなにお金を持っているわけではない。
それに鬘が無くても男装はできるし、鬘に金を使うよりも甘味に使いたいと思ってしまう性分なのだ。
ただ、やっぱり難儀なことであるのは変わりないのでそろそろ本格的に貯金するためにアルバイトを増やそうと思っている。
(どうせアルバイト増やすんだから、今日はいつもより買い物してもいいかな…)
私達は良い所に甘味処があることに気づいて、入ってみることにした。
『留子さんは何か欲しい物ありますか?』
留「私は、そうねぇ……羊羹が食べたいわ」
『いいですね。すみません!羊羹二つください』
「はーーい」
羊羹なんて久しぶりである。
早く食べたいな…
そんなことを考えながらもこれが実習であるということを忘れてはならない。
今のところ視線は感じない。先生は一体何を持ってこの実習の採点をするのだろう。
向かい合う形で座っている私達は何か話すこともなく、目が合えば微笑み合うということを繰り返している。
(恋人なんていたこと無いからなぁ…行動はそれっぽくできても何話せばいいのか……)
良い評価をもらうには恋人らしくキャッキャ話した方が良いのだろうが、やり方が分からない。
向かいの彼も同じなのだろうか。
留三郎って恋愛経験ありそうだと思ってたんだけど……もしかして相手がいるからこそ今全然話さないのかもな。恋人に悪いものね。
でもこれは実習だし、良い成績取らないと卒業できないから……私はそこまで配慮はできません。
私は机に置かれたお茶を一口飲んだ。
『あの、この後は行きたい所ありますか?』
留「え?!えっと……決めてないわよ!」
『そうですか。じゃあこの後は僕がリードしますので留子さんは付いてきてください』
留「?!わ、わかったわ!」
留三郎、もとい留子さんの話し方が少々気になったが、何とか実習は成功できそうである。
そして丁度良いタイミングで羊羹も運ばれてきたのだが、
『これ頼んでませんよ』
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時