四十二 ページ44
【留三郎side】
本当に吃驚した。
Aに化粧してもらってから鏡を見た時は「この美人誰だ?」と思って、自分だと理解するのに時間がかかった。
別に自惚れているわけではなく、ただAの変装技術に感心していたのだ。
今もそうである。
留「……本当に男か女か分からねえな」
『話し方が戻ってます』
留「あ、すまn……ごめんなさい」
『油断しないでください。此処を出てしまえば私達はもう恋仲なんですから』
(恋仲ねぇ……)
“恋”というのは面倒くさい。
今までに何度か女子と恋仲になったことはあるが、全員相手から告白を受けたし、その全員に最終的に「貴方は私より他を優先するのね」と、縁を切られてしまった。
正直なところ恋人もその他も俺にとっては同じくらい大事だ。
だから、恋仲と称して相手を一番に優先しなければならなくなることが途中から嫌になった。
勿論、恋仲になって良い思いをしてきたこともあったが、それよりも縛られることが気に食わなくて、ここ何年かはそんな相手を作っていなかった。
確かにプロになればこういうこともあるかもしれないが、まさかこんな課題が出るなんて思ってもみなかった。
逢引なんて久しぶりだからやり方なんて忘れてしまっている。しかし今回は女役だ。普通なら男役に引っ張っていってもらえば良いだけの話なのだが……
Aはこの手の事について微塵も知識がないだろう。
だからと言って、俺が引っ張っていくのもなぁ……
『ほら、早く行きますよ……留子さん?』
留「……ん?ああ、悪i…ンン、ごめんなさい。少し考え事をしてたの」
『留子さん、今は他事なんて考えてないで僕だけを見ていて下さい。ほら』
留「…………え?」
俺は信じられなかった。
あろうことかAは口説き文句を言いながら、俺の目の前に手を差し出したのだ。
“手を繋げ”という意味なのは明らかである。
あの色恋の知識なんて微塵も無さそうなAがだぞ?!
そりゃ驚かない方がおかしいだろ!!
些か動揺しながらも俺はAの手をとって門の外に出て、いつもより少し遠くの町へと向かった。
___手を差し出された時の男のAを見て、顔が熱くなったのは驚いただけだと思いたい。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時