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三十七 ページ39

その後、粥を持ってきてくれた長次と小平太と共に仙蔵も部屋から出て行った。

静まり返った部屋で一人粥を食べていると、無性に人肌が恋しい様な感覚に陥った。

そして気づいてしまった。孤独を寂しいと思う自分に。

人を知ることで、心身共にこれ程までに弱くなってしまった自分がこれから先やっていけるのか、とか

今考えなくてもいいようなことばかりが頭の中を埋め尽くしていった。

ただ不安を煽るだけだというのに、そればかりが脳を支配していく。



ああ、

独りは本当に寂しい。






すると、トントンと優しく戸を叩く音がして『どうぞ』と言えば入ってきたのは若い姿のシナ先生だった。


『お帰りなさいシナ先生』

シナ「ただいま。それから……はいっ!これ」


シナ先生から渡されたのは小さな包みだった。

「開けてみて」と言われて、包みを開くとそこには色とりどりの団子が入っていた。


『シナ先生、これは……?』

シナ「Aちゃんのために買ってきたのよ。貴方、甘味好きだったでしょ?」

『大好きです!』

シナ「ふふっ、じゃあ早く元気にならないとね?さもないと私が全部食べちゃいますよ」


茶目っ気たっぷりな笑顔で言うシナ先生に、私は参りましたね、と言って頬を掻いた。



先生は包みから一本串を手に取ると、はいっと私に向けて差し出した。

手で串を受け取ろうすると、サッと躱される。


シナ「あーん」

『……ああ、なるほど』


どうやらここから食べろということだったらしい。

シナ先生は私に団子を食べさせると、とても満足気な顔をした。


(何だろう…餌付けさせている様な気分……)

少々不満ではあったが、食べた団子が美味しかったのでそんなことはすぐに忘れてしまった。


シナ「残りは元気になってからね」

『はい……』


あからさまにテンションが下がった私を見て、シナ先生は笑みを溢した。


『笑い事じゃないですよ……』

シナ「ふふっごめんなさい。ただね……一年生の頃から変わらないなって思ったのよ」

『え?』

シナ「貴方一年生の時も風邪をひいたことがあって、その時もこんなふうに甘いものを買ってきて食べさせたのよ」

『そうだったんですか…』

五年も前のことなんて、もうてっきり忘れていた。



『……私、自分は弱くなってしまったのではとばかり思っていました』

シナ「生きてる以上、誰だって一時的に弱る時くらいあるわよ」


その言葉に心は幾分か軽くなって、そして少しの虚しさが残った。

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設定タグ:忍たま乱太郎 , 忍たま , 愛され・逆ハー   
作品ジャンル:恋愛
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高  (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時

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