三十六 ページ38
【仙蔵side】
Aの発言に、警戒心の無さに、私は腹が立っていた。
そして怒りの衝動に任せて、あろうことかAを押し倒し、組み敷いた。
仙蔵「………何故そう思う?何故そう言い切れる?もし連れてきた奴に下心があったら……弱っている女を前に理性も保てない様な外道だったらとは考えないのか?」
怒りと嫉妬で目の前が見えなくなっていた私はそんな事を口走っていた。その外道に今自分が成りかけているというのに。
そんなことにも気付かないで、私はAを怒鳴りつけた。
本来なら頼まれたのが自分で良かったと安堵するべきなのに、もし私ではなく他の人間が選ばれていたらと思うと平常心ではいられなかった。
そしてやっと我に返った時にはもう手遅れだった。
いくら冷静沈着な優等生だと賞されても、自分はただの男にすぎないのだと思い知らさせた。
こんな私をどう思うだろう。
恐怖するだろうか。軽蔑するだろうか。
冷たく突き放される覚悟はできていた。
でも、彼女は顔色一つ変えなかった。
それどころか彼女は言ってのけたのだ。
『私の信頼する人が判断を見誤る筈がないでしょう?
それに__
____私自身、貴方達を信じていますから』
こんな状況だというのに彼女の態度はいつもと何も変わらなかった。
そして、このようなことに対して異常な程に無知だからなのだろうか、私が上を退けば彼女は何事も無かったかの様にまた話し出した。
そんな彼女の様子に私は安堵していた。
やっぱり覚悟なんて毛頭できていなかったのだと思う。
表面上で何と思っていようと、心の奥底ではやっぱり嫌われたくないという思いが強くあるらしい。
彼女の無知さに怒りを覚え
しかし、それによって救われた。
私はまた現状に甘んじることを選んだのだった。
_____
【主side】
私がまた何事も無かったかの様に話し出せば、仙蔵もまた何事も無かったかの様に続けた。
私もそこまで無知ではない。
あの状況が危ういものだったこともちゃんとわかっていた。
それでも私が逃げなかったのは、仙蔵が本当はこんなことをする様な人間ではないと知っていたから。今まで一緒に過ごしてきて分かっていたから……
でも、決して怖くない訳ではなかった。
“あの人”の様になってしまうんじゃないかと心の何処かでは思っていたのだ。
軽々しく《信じてる》なんて___
私も本当に嘘つきだな。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時