三十三 ページ35
文次郎の震えがやっと止まり、本人は何事もなかった様に真顔で此方に向き直った。
文「つまり留三郎はその《通称:食物兵器》で今まさに三人からの制裁を受けているということか」
『ざまぁみろって思ってます?』
文「他にどう思うというのだ」
『ですよね……』
一つため息をついてからそう言った。
『では、私はこれでお暇します』
文「ああ」
私は戸の方に歩いて行き、引手に手をかけた。
その時、後ろの方から小さく聞こえたのだ。
「…………粥、ありがとな」
横目でチラッと見てみたけれど、また背を向けられていたので顔は見れなかった。
(まったく、素直じゃないな)
は組の部屋に入ると、笑い転げているさっきの三人と、苦笑いしながら粥を口に運んでいる伊作の姿があった。
『あれ……留三郎は何処に?』
仙蔵「フフッ…あいつなら厠に向かったぞ」
伊作「どうやら下剤を盛られたみたいでね……ックシ」
『下剤ッ?!』
聞いてないけど?!
生姜や唐辛子などなど、さっき入れたと言っていたものは確かに嫌がらせだった。
しかし逆にそれらを入れることで薬膳粥の様なものになり、身体に然程問題はないと思って放って置いたのだが……まさかそんなものを入れていたとは。
(問題児を野に放った私が甘かった……)
私のこういうところが馬鹿だと文次郎は言いたかったのかもしれない。
『さあ御三方、もう一人の病人の体に障りますので、転がってないで出て行ってください』
そう言うと、小平太が口を尖らせた。
七松「……さっきよりもAの態度が冷たい!!」
『今は病人が最優先ですから』
七松「それなら私も病人になるーー!」
『貴方病気にかかったことないじゃないですか』
小平太は少し不機嫌そうに顔を顰めた。
やっと三人を出て行かせることに成功した後、私は伊作の傍らに座っていた。
『すみませんでした。騒がしくしてしまって』
伊作「Aちゃんは謝らないで。僕は大丈夫だから」
伊作はいつもより弱々しく微笑みながら言った。
何故だろうか
その笑顔は私の心をキュッと締め付ける。
それは少しばかり息苦しいもので、
今の私にできることがあるのなら何でもしてあげたい、と思ってしまう。
『伊作、何か私にできることはありませんか?』
私がそう言うと、伊作は考えあぐねた末に片手を私に差し出した。
伊作「……手を握っててほしいな」
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時