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三十二 ページ34

(……本当に大丈夫だろうか)


さっきの件もあって、長次も信じていいのか分からなくなってきた。




私は今、い組の部屋の前に立っている。

戸を叩くと、中から文次郎の声がしたので私は中に入った。


文次郎の声は掠れ気味で具合が酷く悪そうなことは聞くだけで明らかだった。




『粥を持ってきました』

文「ん……その声はAか?」


『ええ、仙蔵に頼まれたので』

文「仙蔵の奴……どうせ面倒だったからお前に押し付けたんだろう」


流石は同室。仙蔵の性格をよく理解している。



文「すまなかったな。わざわざこっちの長屋まで足運ばせて」

『私は元々は組が共倒れになってたのを看病しに来てたので、謝らなくても大丈夫ですよ』


私がそう言うと、文次郎は「あーー」と声を上げた。


文「チッ……留三郎の所為か」

『留三郎……?』



話を聞くと、どうやら予算会議の後に留三郎と一悶着あったようで。

恐らく風邪がうつっていた留三郎と接触したことでそれが文次郎にうつったようだ。


文「おかげで鍛錬できないわ、仙蔵に揶揄われるわで、本当にうんざりだ」

『それは災難でしたね』

文「仙蔵は風邪がうつるからと、ろ組の部屋に避難したしな……お前も早く出ていった方がいい。うつるぞ」



文次郎は寝返りを打って、わざと私から顔を背けた。


(いつもは怖くて厳しいことを言う癖に、こういうところは優しいんだよな)

私は内心、つくづく此奴は昔から変わらないなぁと思った。



『大丈夫です、私今まで風邪ひいたことないので』

文「…………確かにバカは風邪ひかないって言うよな」

文次郎はいつも通り憎まれ口を叩いた。
そしてそれに対抗するように私も言う。

『要するに私が馬鹿だって言いたいんですね?残念ながら私の方が貴方より成績は良いと思いますよ』

文「頭の良さを言ってるんじゃない……抜けてるところが多過ぎるんだよお前は」

『抜けてるって例えばなんです』

文「た、例えば?!……あのなぁ……それは___」







《ぎゃぁぁぁぁぁあッッッ!!!!!!!》





急に吃り始めた文次郎が話し出そうとしていた矢先、近くから叫び声が聞こえてきた。


文「これは……留三郎か?」

『あ、しまった』

文「何がだ」

『実はかくかくしかじかで……』



私が説明すると、文次郎は突っ伏してふるふると震え始めた。


(笑い事じゃないってば)

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設定タグ:忍たま乱太郎 , 忍たま , 愛され・逆ハー   
作品ジャンル:恋愛
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高  (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時

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