上級生の紅一点は、無愛想。《第一章》【RKRN】 (ページ1)

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プロローグページ1

(もう麓では桜が咲いてるのかな)

満開の桜を思い浮かべながら私は淹れたばかりのお茶を口にした。

『＿＿＿あつッ』

案の定火傷して舌をべーっと出すと母上がクスクスと私を見て笑っている。

『母上ぇ……』

母「ふふっごめんなさい。今お水持ってくるわね」

私が恨めしそうに見ると母はそう言って台所へ足速に入っていった。

そしてその様子を見てまだ笑ってる人がもう一人

『……兄上も早く笑うのやめてください』

「ははっ、ついつい……それにしてもAは昔から相変わらずドジだな。そんでもって無愛想」

『今それは関係ないでしょう。早くやめないと外の時みたいに利吉さんって呼びますよ？』

兄の意地悪い笑みをやめさせたくて、私は兄の弱点を突いた。

流石にそれは嫌だな、と兄上は黙ってくれたが、まだ懲りていないようで私をじろりと睨みつけている。
それを横目に見ていると水を持った母上が戻ってきた。

『ありがとうございます』

母「いいのよ。それより大丈夫だったかしら？」

『はい。少し触れただけでしたので』

私は水を飲み干すと少しぎこちない笑みを溢した。

母「……五年間一緒に過ごしてきたけれど、まだ笑顔には慣れないのね」

『ええ……申し訳ありません』

母「いいのよ。無理して笑う方が辛いもの」

そう言って私の頭を優しく撫でてくれるのは本当の母ではない。私の通う忍術学園の山田伝蔵先生の奥様だ。

私は忍術学園に入ってから休みは山田先生の家で預かってもらっていた。そしていつからか、私は奥様を母上と呼び、息子の利吉さんを兄上と呼ぶ様になっていた。

今年の一年で山田家の方々と過ごすのも最後
こうして甘やかしてもらうことからもそろそろ卒業しなければならない。

『すみません…春休みを此処で過ごすのも今日で最後なのに……』

母「あら何言ってるの？まだ夏休みも冬休みも残ってるのよ？今日でお別れみたいな言い方しないの。それに、貴方が学園を卒業したって私達は家族でしょう？」

母上は私の頬を両手で包んでそう言い聞かせる。

利吉「母上の言う通りだ」

兄上も同じ様に優しくそう言った。
そして私はまたぎこちなく笑う。

これは私の忍術学園最後の色濃い一年間の物語