その22 ページ22
万屋のある町には沢山の人がいた。
自分が住んでいた町よりももっと規模が大きく賑わっていて、沢山の店があった。
「みてみて！これ美味しいんだよ！」
「んぐっ........あ、おいしい」
無理やり口に突っ込まれた甘いお菓子は、とっても美味しかった。
「でしょ？みんなに買って行ってあげよーっと」
楽しそうに店の人に話しかける乱さんを見ていると、こちらまで楽しくなってくる。
周りを見渡せば、私と同じくらいの年頃の女の子は皆店の外でお団子を食べていたり楽しそうに話をしたりしていた。
その様子を見て、あの子たちがこれからもあんな風に幸せに暮らしていくための平和を守るのは私たちの役目なんだと再確認した。
.
ボクがあげたお菓子を食べ終えた忍びさんは、急に遠くを眺め出した。
視線の先を追うと、そこには忍びさんと同じくらいの女の子達が楽しそうに話をしていた。
「...ねぇ、忍びさんはなんで忍びになったの？」
核心を突くようなことを聞いてしまったことを後悔しつつも、ボクは彼女の目をまっすぐに見つめた。
「何もしないのが、嫌だったのかもしれないです。」
忍びさんは優しそうに笑ってから、そう言った。
万屋に行くために少し細い路地に入ると、どこからか怒鳴り声が聞こえてきた。
「乱さん、少し待っていて下さいね」
忍びさんはそう言うとボクの頭にそっと手を置いて、路地の奥へ入って行った。
＿＿しばらく、時間が経った。
「...おかしい。」
忍びさんが奥に入ってから、もう何十分も経ってる。
しかも、いつの間にか怒鳴り声が聞こえなくなって...
ハッと気付いて、ボクはすぐ路地の奥に走って行った。
「忍びさん！！ねぇ、どこ？！忍びさん！！！！」
辺りを見回しても、誰もいない。
ふと目に入った壁にこびりついた真新しい赤いシミを見て、絶句した。
「ウソ...どこ行っちゃったの、なんでボクを置いていったの、ねぇ.....」
どうしようどうしようと必死に考えていると、地面に小さな紙切れが落ちていることに気がついた。
「...これ、遊郭の名前じゃ.......」
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作者名：にわ | 作成日時：2020年2月7日 19時
