我が主はわがまま姫【巴日和】 (ページ17)

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16話ページ17

sideA

「当主が私を…ですか？」

てっきり日和さんに用があると思っていた。
私が呼ばれるとは思わなかった。

当主のいる執務室の扉を叩く。
了承する当主の声を聞き中へと足を進める。

「ご無沙汰しております。当主様」
「楽にしてくれて構わないよ。元気そうで何よりだ」

柔らかな微笑みを浮かべながら私を椅子へと促す。

「調子はどうだい？」
「万全です」
「それはなにより」

当主の柔らかな笑顔が引き締まったものへと変わった。
本題に入るようだ。

「聡い君のことだから日和より先に呼ばれたことに疑問を感じているだろうね」
「どういった御用でしょうか…」
「そろそろ君も自分の道を歩むべきじゃないかなと思ってね」

すぐにはその言葉の意味を理解できなかった。

「それは…どういう意味で？」
「君は素敵な女性になったと私は思うんだよ。そんな子を自分の息子のために縛り付けておくのは良くないと思ってね。それに日和もそろそろいい頃合いだから婚約でもさせようかなと」

当主の言いたいことが分かった。
日和さんと1番距離の近い異性は確実に私だ。
日和さんに婚約者をあてるには私という存在は邪魔でしかない。つまり、

「解雇…ということで？」

当主は笑ったまま答えない。
だけど私には肯定されているように感じた。

「1度従者をやめるのも良いと思うよ。視野を広げるのにね…。君を幼いころから見てきたんだ、如何に君が真面目で優秀な子だと言うのは理解してるつもりだよ」
「…もったいない言葉です」
「ゆっくり考えてみないかい？もし良ければだけど君をｰｰｰｰｰ」
「いえ当主」

当主の言葉を遮り私は言葉を繋げた。

「すぐに荷物をまとめます。幸い、住まうところはありますのでご迷惑になる前に」
「…そうかい？」
「お気遣い頂きありがとうございます。とても良い経験を積めました」
「そう思ってくれるなら嬉しいよ。…じゃあ、日和を呼んできてくれるかい？」