我が主はわがまま姫【巴日和】 (ページ16)

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15話ページ16

sideA

あの日から私と日和さんはあまり言葉を交わさなくなった。
お互い気まずいのか、目が合っても軽い挨拶だけ。

巽「それで、Aさんは私に何を伝えたいのですかな」
「冷たい言い方はやめてください。今の私にはかなりきます」
巽「そういうつもりではなかったのですが……」
「日和さんへの想いをやっと自覚できたと思えば、今度は日和さんとギクシャクしてしままってます……。私は本当にどうしたら……」
巽「おやおや、Aさんもすっかり乙女ですね」
「からかうのであれば帰ります」
巽「変化が好ましいだけですよ」

巽は笑顔で答える。
本当に腹の底が読めない男だと思う。

巽「私から言うのであればまずはカフェでの出来事を手短にでも話せたらいいと思いますね」
「……日和さんのことが好きだと自覚したと言えばいいのですか？」
巽「言えますか？」
「言えません」
巽「だったらぼかして言えばいいですよ。」
「どうやってですか？」
巽「好きな人の話をしていましたとか」
「……一つ、話忘れていたことがありました」
巽「なんでしょう」
「……日和さんに好きな人ができたら教えてと言われました」
巽「ほう？」
「だけどその時の表情が……」
巽「表情が？」

私は鞄から蔵書を取り出しそのページを見せつける。

「まるでこのヒーローの様な顔だったんです」

せつないような。それでいて慈愛に溢れた表情。

「そんな顔をしていた日和さんにそんなこと話せますか？……まるで距離を取ろうとしているかのようでした」
巽「Aさんがそう思うのであれば本人もそう思っていたのでしょうな。Aさんほど日和さんの心の内を理解できる人はいませんから」

巽との話は一向に進まないままその日は解散した。
次の日、巴家からの呼び出しを受けて日和さんと共に本家に帰ることになった。