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入居して約1年が経ったある日。

リビングでAが引っ張り出してきたカードゲームをやっていた時だった。



佐野「俺来月からウィーンに留学するんすよ。今年は新しく入ってくる人もおらんみたいやし、しばらくはリチャくんとAちゃんの2人だけやね」

「わーついに行くんだ!お土産たくさん待ってるね〜」

佐野「Aちゃん"旅行"じゃなくて"留学"やから」

「わかってるよ〜笑」

リチャ「それってどれくらい行くん?」

佐野「今んとこ1年の予定ですよ」

リチャ「そうなんや。頑張ってきや」

佐野「リチャくん!ありがとうございます!お土産いっぱい送りますね笑」

「えーリチャくんだけずるい〜。あ、待って!ウノって言ってなかった!もー晶哉のせいでしょー」

佐野「いや俺ちゃうやろ!笑」

リチャ「はいA2枚取りや」



当たり前になりすぎていたこんな日常も、もう戻ってこないなんて思いもしなった。


──────────────────


晶哉が飛び立って数ヶ月経った夏頃。



リチャ「うわ、どうしよ」



仕事帰りに電車をおりると雨が降り始めていた。

コンビニで傘を買うか、それとも小雨になるのを待つか。

携帯の天気予報アプリを開き、この後の降水確率を確認していると



「リチャくん!」

リチャ「A、!? …なにしてんの?」

「傘もってないかなって思って迎えきた!」

リチャ「持ってへんけど…なんで傘1本だけなん?」



Aの手には今さしている傘しかなかった。



「あわよくばリチャくんと一緒の傘に入れてもらおうと思って笑」

リチャ「…」

「ってのは冗談で、もしリチャくんが傘もってたら荷物になると思ってもう1本は折りたたみ持ってきた!」



自慢げにAが取りだした折りたたみ傘。



リチャ「…A、その傘壊れてるはず」

「え、嘘!?」



この折りたたみ傘は元々晶哉が使っていたものだ。

確か柄の部分が曲がったとかなんとか言っていた。



「…わ、ほんとだ開かない、」



どうにかして開けようと試行錯誤しているAを見ていると自然と笑みが零れてしまう。



リチャ「いいよ同じ傘で笑 迎え来てくれてありがとう。 」

そう言ってAがさしてきた傘を受け取った。

・→←夢見月の君へ Richard.



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作品ジャンル:恋愛
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作者名:うに | 作成日時:2024年3月11日 4時

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