恋はときには。 (ページ6)

今日:20 hit、昨日:33 hit、合計:9,919 hit

夢見月の君へ Richard. ページ6

「私はね、春が嫌いなの。お母さんもお父さんもいなくなったのが春だったから。」

「でもね、もう春が来るのも怖くないや」

そう言った君は次の年の春

僕の前から姿を消した。

────────────────────

専門学校を卒業してから数年間勤めた地元の美容院をやめ上京することにした。

将来自分の店を持ちたかったから、できる限り生活費は抑えたくて不動産屋に相談したところ勧められたのはシェアハウス。

最大4人住める二階建ての一軒家で、各自の部屋も確保されてるし家具とかも備え付け、家賃もかなり抑えられるよって。

正直他人と住むのは向いていないけど、この際仕方がないと思いここに入居することに決めた。

シェアハウスには俺の他に男女1人ずつ入居者がいるとオーナーから聞かされた。

オーナー「2人ともいい子だから、きっとリチャード君も楽しいと思うよ。」

リチャ「はは…そうですか」

そうは言われたものの、当時の俺はそこまでの期待はしていなかった。

適度な距離感を保ってお互い深入りせず過ごせれば良かったから。

それなのに2人にはそんなもの通用しなかった。

佐野「え！リチャくんも関西出身なんすか！俺も関西なんすよー」

リチャ「あー、うん。そうなんや、」

「じゃあ私だけ東京出身だね～」

佐野「やっぱ3人くらいおると楽しいねAちゃん！」

「それ私と2人だとつまんないってこと？笑ねぇリチャくんどう思う？」

リチャ「、え…どうやろ？」

佐野「そーゆー意味じゃないからー！」

都内の音大に通う学生の晶哉と、晶哉より3つ年上でフリーランスで仕事をしているというA。

2人ともはじめから距離感近すぎて少し引いたのは今でも覚えてる。

シェアハウスには晶哉とAがつくったといういくつかのルールが存在していた。

1 一人以上家にいる時は必ず一緒に食事をとる事
2 見たいテレビが被ったらじゃんけんで決める事
3 1日1回は全員で顔を合わせる事

4 シェアハウス内で恋愛をしない事

調子狂うなと思いつつも気付けばこの2人との共同生活にも順応していった。

こんな生活も悪くないかって。