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日影茶屋をでて適当に辺りを散策する。
雲ひとつない5月の陽射しは誰かに見られているようにさえ感じてしまう。
「、今日だけやから」
そう言って誠也くんの腕に自分の腕を絡める。
今日のふたりは共犯者。そうでしょ？誠也くん。
通りがかった江ノ電は、もう戻れないあの頃を思い出させる。
淡い恋心と共に私の胸を溢れさせるんだ。
日も傾きはじめた由比が浜。
まだ海開きをしていない砂浜にはポツポツと人がいるだけで、静かに波音だけが響いていた。
重なった手のひらに誠也くんの熱を感じる。
「…なんであの時私のこと振ったん？」
末澤「なんでって…」
「あーやっぱいいや、聞かんとく。聞いたら余計なこと言っちゃいそう。」
末澤「A」
「帰ろ！今日はありがと楽しかった」
末澤「A！」
末澤「なんちゅう顔してんねん…」
振り返った私はきっと今にも泣きそうな顔をしてたと思う。
目と目が合えば惹かれ合うように私たちは唇を重ねた。
末澤「ごめん」
「なんで謝るかなぁ、笑」
末澤「俺来月結婚するねん」
「うん、知ってた」
末澤「は、なんで？」
「小島から聞いてた。それに昨日、左薬指に指輪してたのに外したでしょ？」
末澤「…」
「悪い男やね、誠也くんも」
本当は気付かないふりしたってよかったのに、全部バラしちゃうのはどうせどうにもならないことを最初からわかってたから。
6月に挙式なんて如何にも誠也くんらしくて、少しムカついてしまうけど。
「後悔しないでよ、私を振ったこと」
末澤「…ん」
「じゃ誠也くんは帰ってもらって」
末澤「は？A帰らんの？」
「私は1泊して帰ります笑 ほら駅まで送ったげるから 」
きっともう一度くちづけされてたら、涙が頬を伝っていたかもしれない。
"結婚なんかしないで"って言葉が溢れていたかもしれない。
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作者名：うに | 作成日時：2024年3月11日 4時
