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佐野「Aちゃん施設にいたって言ってたけど、本当はここに来る前まではずっと入院生活やったみたいです。」
佐野「20歳の時に余命宣告受けて、残りの時間少しでも自由に過ごしたいってお医者さんに無理言ってここに住んでたんです。」
言われてみれば、思い当たる節はいくつもある。
リチャ「…晶哉は知ってたん?」
佐野「…はい。俺が入居したての頃にAちゃん1回おっきな発作起こしたことがあってその時に全部聞きました。」
リチャ「そっか」
そういえば、晶哉は日本を離れる前「リチャくん、Aちゃんのことよろしくお願いします。」ってやけに真剣な顔で言ってきた。
あの時の違和感にちゃんと気付くべきだった。
佐野「Aちゃんに口止めされてたんです。病気のことはリチャくんに言わないでって。きっとAちゃんは病気やからとかじゃなくて、普通の人とおんなじようにただリチャくんと何気ない日々を過ごしたかったんやと思います。」
この歳になって泣くことなんてないって思っていたのに、自然と涙が流れてくる。
前に座る晶哉も目を真っ赤にさせていた。
リチャ「Aがここでてからも連絡とってたん?」
佐野「ううん。リチャくんにAちゃんが出ていったこと聞いてから何回電話掛けても繋がらんし、メールも既読つかんくて、。けど4ヶ月前くらいに急に電話きたんです。渡したいものがあるって。」
それがこの手紙やったってことか。
佐野「すぐに帰国して、Aちゃんが入院してた病院行って。そこでリチャくんに連絡しようとしたらまた止められました。手紙も春になったら渡してって言われて。すみません、すぐに渡せば良かったのに…」
佐野「晶哉が謝ることじゃないから。寧ろちゃんと渡してくれてありがとう。」
本当は知っていた。
リチャ「好きな子との約束守っただけやろ?」
佐野「リチャくん、」
晶哉がAを好きだったこと。
この手紙を俺に渡さないことだってできたはずなのに。
佐野「俺、Aちゃんと同じくらいリチャくんのことも大好きなんです。だからAちゃんの分もリチャくんには幸せになって欲しいです。」
リチャ「2人揃っておんなじようなこと言うんやな笑」
佐野「えっ?」
窓から射す暖かい光が春の訪れを感じさせる。
もう逢えないはずなのに、まるでAがそこにいるかのようだ。
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作者名:うに | 作成日時:2024年3月11日 4時