恋はときには。 (ページ2)

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すっかり夜も濃くなり2人で店を後にする。

普通の男女ならわざと終電を逃したりなんかするんだろうけど、私たちはまっすぐ駅に向かっていた。

末澤「A何線？」

「──線。誠也くんは？」

末澤「あー、俺あっちやわ。」

「そっか、じゃあここで」

末澤「ん、今日はありがとう。」

「こちらこそありがと」

遠ざかっていく背中が変に名残惜しくて胸がぎゅと掴まれる。

「誠也くん、！」

気づけばその背中を追いかけて、人目も憚らず名前をさけんでいた。

末澤「え、なに、どうしたん、！？」

「…明日1日空いてへんかな？」

末澤「明日…空いてるけど」

「付き合ってくれへん？鎌倉行くの」

末澤「鎌倉？」

「実は彼氏と行く予定やってんけど、こないだ別れてん。でもせっかくやし1人で行こうと思っててんけど…」

「一緒に行ってくれへんかな、」

本当は彼氏なんて嘘。

一緒に行くはずだったのは職場の同僚だけど、"彼氏"と言ってしまったのは少しの見栄だったのかもしれない。

それでも、

末澤「ええよ。」

「…！じゃあ明日10時に──駅で、！」

末澤「了解。携帯の番号変わってへん？」

「変わってへんよ。」

末澤「ん、じゃあまた明日な。なんかあったら連絡するわ」

「うん、ありがとう。また明日、」

これがきっと最後のチャンスだから。