小旅行 seiya. ページ1
「ファジーネーブル1つお願いします」
店員「かしこまりました」
社会人になって3年。
金曜日だと言うのに理不尽に上司からの残業を命じられた帰り道。
お酒は得意なわけじゃないけど、今日くらいアルコールを入れてやろうと何気なく入ったバーはカウンター席しかないこじんまりとしたお店で。
お客さんも私の他に1つ席を挟んで座っている男性だけ。
妙に落ち着いた雰囲気は先程までの鬱憤も包み込んでいくようだった。
「A?」
どこからか自分の名前が呼ばれる。
聞き覚えのあるその声の主は、
「誠也くん…?」
末澤「…なにしてんの。こんなとこで」
「なにしてんのって、就職の時に東京にでてきてて…」
末澤「そんなん全然知らんかったわ」
「言ってへんから、ね」
まさか大学時代のサークルの先輩・誠也くんに会うなんて。
末澤「まだそんな甘い酒ばっか呑んでんの?笑」
「そんなことないけど、」
末澤「隠そうとしたって無駄やで笑」
そうやって悪戯に笑うところ。
変わってない。
「それより誠也くん、まだ東京いたんやね」
末澤「…俺がこっちおること知ってたん?」
「小島から聞いた。誠也くん転勤なったらしいって」
末澤「あー…あいつほんま」
"言ってくれれば良かったのに"
その言葉を喉につかえて声にはならなかった。
末澤「ふーん、じゃあ小島は大阪残ってんねや」
「うん。そうそう、誠也くんたちの一個下の代が引退した後、小島がサークル長やってたの聞いた?」
末澤「聞いた聞いた。小島がサークル長ってやばかったんとちゃうん笑」
「お察しの通りかなーーり自由にやってたけど、なんでか低回生の女の子にはイケメンサークル長って持ち上げられてめっちゃモテてたんよ」
末澤「なんやねんそれ笑」
大学時代の思い出話や今の仕事の話。
それなりに盛りあがっても、お互い確信に迫ることは避けたような会話が2時間ほど続いた。
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作者名:うに | 作成日時:2024年3月11日 4時