【第五人格】推し達に嫌われてます

四十五話 ページ47

・










｢やって来ました…図書館ーー！！｣


誰もいないことを確認して、まぁまぁの大声で叫ぶ
いやぁ良いストレス発散になりますねぇ

さて、ヘレナが興味を持ちそうな本は無いかな と思いながらドタドタ走り回っていると、一枚の紙が目に入る


"図書館ではお静かに"
"騒いでいる所を発見次第、その方は一週間出禁にします"


｢…｣


自分のことだ、と慌てて口に手を当てる
危ない危ない、図書館出禁になるなんて本末転倒だ

今度は落ち着いて歩きながら本を探す
…とは言っても私は正直本が好きというわけではない
好きなのはあくまで漫画であって、参考書とか小説とかはあんまり…って感じ

当然この時代に漫画という素晴らしい日本の文化があるわけもなく、図鑑や地図、辞書といったThe 勉強用の本ばかりが並んでいた


｢…あの｣


つんつんと背中をつつかれ、声をかけられる
まだ聞いたことが無い声に誰だろうと思いながら振り返ると、白杖を片手に持ったヘレナが立っていた

目が見えないから、まだ目の前にいる人物が誰なのか把握していないんだろう
特に怯える様子もなく首を傾げている


｢ごめんなさい、邪魔しちゃったわね｣


なるべく優しく言ってみたけど、ヘレナは少し震えた声で
"は…はい" と言い、おぼつかない足取りで歩いて行った

ヘレナの様子を見て、エマに泣いて怯えられた時のことをふと思い出す
あぁ…そういえば私って嫌われてたんだな、と改めて実感させられ、急に辛くなる


｢っあ…！｣

｢…？って危ない！｣


それでも何か行動しないといけない
動かぬ体を必死に動かしてヘレナの方を見ると、床に積まれた本に足が引っかかっている様子が見えた

頭で考えるよりも体が先に動き、ヘレナの腕に手を伸ばす
くそ、間に合わな＿＿

トンッ


｢ぐへっ…｣

｢あ…ソフィアさん、大丈夫…ですか？｣


ヘレナは器用に杖を使って、何とか床とこんにちはをせずに済んだみたい
代わりに早とちりした私が、情けない声と共に床にダイビングしてしまう


｢だ、大丈夫よ…貴方は？｣

｢す、すみません。私の不注意で…！｣


突然謝罪しぺこりと深いお辞儀をするヘレナ
それをされて、何となく予想はしていたけど心が痛む私
…こうなるのは分かってたんだけどな

よっと立ち上がって、壁に手を着く
曖昧な返事だけをして、どうしようかな…と考えていると
そういえばリッパーに点字の本でも探せと言われたことを思い出し、とりあえず探してみることにした

四十六話→←四十四話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す