一途にも程がある その4【時透無一郎】

156.甘えたさん ページ21

急に体を起こされ、急に抱きしめられたものだから、目の前に星が飛んでいる。
チカチカ。



「Aを怒ることなんてできないー。
もうっ、もうっ！
しょげている姿までかわいいとかずるくない？」



おでこを私の肩にグリグリとしてきた。
そんなことする無一郎がかわいいんですけど。



『でも、黙ってたのは私だし…ごめんね。』



すると、無一郎は私の肩から勢いよく顔を上げ、両手で私の顔を挟んだ。
いや、潰れちゃいますけど…？



「かわいいから、ちゅーだけしていーい？」



その宣言何？
おもしろすぎでしょ。
思わずクスクスと笑ってしまった。



『それは、言われなくても。
あ、でも、それだけだからね。』

「……善処します。」



宣言通り、本当にキスだけだったんだけど、その後が大変だった…___。



『___ねぇ。』

「んー？」

『映画観にくい…。』

「俺は観やすいよ？」



私はソファーに礼儀正しく座っているのに、無一郎は私の体を隣からギューッと抱きしめ、頭を肩に乗せている。
いや、わたしゃ大きなぬいぐるみか。



『ねぇ、ちょっと離れて？』

「やーーーーだ。」



余計に力が入った。
絶対に離してくれないぞ、こりゃ。



「ねぇ、好きって言って？」



おいおい、次はそれですか？
口をぱくぱくさせていると、「言って？」とまた言われた。



『好き。』

「へへへ。」



無一郎は満足そうに微笑み、肩の上で頭をグリグリとした。



この日を境に、無一郎は甘えたになってしまった…。

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