一途にも程がある その5【時透無一郎】

208.ごちそうさま ページ28

今日は休みだけど、無一郎はゼミのことで大学に行かなければならないらしい。
大変だなぁ…。(他人事)



「じゃあ行ってくるね。」

『うん、頑張って。』



靴を履いた彼はドアを開けずに、こちらにくるりと体を向けた。
忘れ物かと思ったけど、違うようだった。



「いってらっしゃいのちゅーして。」



まさかのキス要求。
無一郎はかわいく首を傾げ、甘えるような声で言ってきた。
ぐっ…と喉が詰まる気分だ。



『え…嫌だ。』

「もー、じゃあいいよ。」



断るとすぐに諦めたようだった。
ドアの方に体を向けようとしたかに思えたけど、それはまさかのフェイントだった。
私の後頭部に手を回し、グイッと引き寄せた。



「ごちそうさま。」



私からはしなかったけど、無一郎がキスをしてきた。
驚きで口をぱくぱくしている私を放っておいて、「いってきます。」と颯爽と行ってしまった。
とんでもない無一郎だ…！！



両手で熱くなった両頬を押さえ、そそくさとリビングに戻った。
何か、何か、何か……新婚みたいだった！！
うわぁぁぁぁぁ！



恥ずかしくてソファーにあるクッションに顔を埋めた。
恥ずかしいけど気分が上がったので、今日の夜ご飯はハンバーグを頑張って作ろう…！

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