一途にも程がある その5【時透無一郎】

201.バッドタイミング ページ21

夜も遅いし、このまま泊まろうということになった。
明日、休みでよかった…。



ガタッ…
シャーッ…



ホテルの壁が薄いせいか、無一郎がシャワーを浴びている音が全部聞こえてくる。
この設計、絶対にわざとだ。
私の音も彼に聞かれていたはず。
鼻歌を歌わなくてよかった…。



ガラス製のテーブルの上に置かれているスマホを手に取り、画面を見た。
無一郎のおかげか、海斗から電話はかかってきていない。
ホッとし、再びテーブルの上にスマホを置いた時、肘がリモコンにぶつかってしまった。



……さすがに言えないけど、そういう映像が流れてしまった。
カエルが驚いで飛び上がったみたいに、私の心臓も飛び上がった。



『最悪っ…！』



急いでリモコンを手に取り、電源ボタンを押した。
画面が暗くなり、ホッとしたのも束の間だった。



「Aのすけべ。
何観てたの？」



バッドタイミング！！
無一郎が意地悪そうに歯を見せて笑いながら、お風呂から出てきた瞬間だった。
その表情をキープしたまま、タオルでゴシゴシと髪の毛を拭きながら隣に座った。



「ねー、何観てたの？」



ぽんっと、私の太ももに手を置き、グイッと顔を近付けてきた。
逃げるように思わず立ち上がり、『違うから！』と叫んだ。



『肘がぶつかっただけだから…！
観ようとなんてしてないからね…！』

「怒らないの。」

『だって、無一郎が……うあっ…！』



私の言葉は途中で止まってしまった。
なぜなら、無一郎に腕を引っ張られ、彼の上に覆い被さるような形になってしまったからだ。

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