第十二話 ページ13
また、この空間だ。真っ暗でなにも見えない。自分は何をしているのかもわからない。怖い空間。
「……で……いで……」
またどこからか懐かしく感じる声が聞こえてくる。
ただ、前よりも少しだけはっきりと聞こえてくる。
その声のする方へ進んでいくと、また薄い光が現れる。
また光に包まれて、目を開けると学校の裏庭ではなく、昔住んでいた町の横断歩道に立っていた。
両隣には大人の男女が並んでいて顔に靄がかかっている。
すると隣からトラックが暴走して突っ込んでくる瞬間に僕は目を覚ました。
「また……違う夢……」
身体はとても汗ばんでいて、なぜかわからないけど、涙が止まらなかった。
「なんで…僕泣いて……?」
悲しくも辛くもないのに、涙が出てくる。
涙を拭くと涙は止まった。
時計に目をやると時刻は8時10分を指していた。
始業時間は8時20分……
「……遅刻だァァァァァ!」
急いで身支度を済ませ、教室まで全速力で走っていく。
「すみません!遅刻しました!」
勢いよく扉を開けると同時に頭を90度下げた。
「てめぇーが転校生か……」
女の人の声がして、頭を上げると黒髪ロングの綺麗な女性が立っていた。
「転校二日目で遅刻たぁ…いい度胸してんな。」
なぜだろう……本能的にこの人は……怖い!!
「すみまっっっせんでしたぁぁぁ!」
全力で土下座をする。床におでこが思い切りぶつかり少し痛い。
「まぁ、そんだけ謝れたらいいわ。私は禪院真希。2年生よ。よろしく」
すぐに立ち上がって僕はもう一度腰から90度曲げて挨拶する。
「一条Aです!一年生です!これから何卒よろしくお願いします!」
「おう。元気いいな…お前。」
ふと禪院さんの後ろを見ると五条さんと伏黒君が必死に笑いを堪えていた。
いや、五条さんは堪えきれずにほぼ吹き出している。
そんなに面白いか?
「何笑ってんすか五条さん。刺しますよ。」
禪院さんはそう言って槍のようなものを五条さんに向ける。
なんかかっけぇ……
「ごめんごめん。Aの態度が面白くてね……それより、A…席に座りな。」
「は、はい。」
「じゃあ皆揃ったとこで紹介と行こうか。彼女は禪院真希さん!主に呪具を使って呪いを祓う。で、この子が一条A君!真希も聞いてると思うけど、体内に特級過呪怨霊を宿している子さ。」
「乙骨の時とはまた別なんですか?」
「別物さ。この子の場合は呪霊と融合してるみたいなもんだからね。」
禪院さんの痛い視線が飛んでくる……
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作者名:ハクスイ | 作成日時:2019年7月2日 5時