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「君はこの半年間、楽しかった?」
『とても良い経験になりました。何も出来ない私を皆さんが受け入れてくださって…』
「そうじゃなくて君自身はこの半年間を楽しく過ごせたのかを聞きたいんだ」
『楽しく……』
最初は受け入れて貰えなくて悲しかった。
でも一生懸命仕事に向き合うと皆さんが私を迎えてくれた。力不足の私を温かく見守ってくれて、いつからか出社するのが楽しくて嬉しくて仕方なかった。
『とても……とても楽しかったです。今日死んでもいいやって思えるくらい毎日が楽しかったです』
出来なかった事が出来るようになった時、皆が自分の事のように喜んでくれた。
皆で作り上げた写真やコンテンツを見る度、溢れんばかりの感動で胸が鳴った。
どの瞬間を切り取っても、私はやっぱりこの半年間がたまらなく楽しかったし充実していた。
「初めの頃より良い顔をしているよ。今の君は誰が見ても輝いてる。」
『ありがとうございます』
「確かに君はここに来た時はスアに連れられて、何も分からない雛鳥のようだったよ。でも今は違う。君は強くなった。真っ直ぐ成長してる」
温かい眼差しが私を捉えると、途端に思い浮かんだのはドユンオッパだった。
元気にしてるのかな、たまに連絡は取るけど忙しそうだからあまりコチラからは連絡しないようにしてる。
でも助っ人を辞めることだけは伝えようと思って、この前連絡したら何故かドユンオッパの方が寂しそうにしてたっけ。
『半年間、本当に…本当にありがとうございました』
お辞儀をすると、自分の靴に染みが出来た。
ポタポタと落ちてくる滴に、ようやく自分が泣いていることに気づいた。
本当に幸せだった。
そしてこれからもオンニもSEVENTEENの皆さんも他のスタッフさんもこの会社の人全員に幸せになってもらいたい。
泣き叫びたい、そんな気持ちも彼らの成功を祈るためなら飲み込もう。
私より腕の良いメイクさんを雇って、皆がもっともっと輝けるなら今の私もほんの少しはカッコよく写るだろうか。
私の助っ人人生はここで終わり。
貰った勇気と愛情を今度は私が誰かに伝えたい。もっと力をつけて、もっと知識も経験も得た未来で私は彼らと、今度は真正面から向き合いたい。
未熟な私ではなくて、成熟した私で。
「君に出会ってあの子達も変わったよ。良い笑顔をするようになった。僕からも、本当にありがとう」
私はその日初めて、声が枯れるまで泣いた。
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よん(プロフ) - 素敵な作品で一気に読んでしまいました!更新楽しみにしています!! (4月2日 18時) (レス) @page34 id: 17dcf2bc33 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ - 更新楽しみにしてます!! (12月2日 0時) (レス) @page34 id: 70f217a4be (このIDを非表示/違反報告)
犬飼いたい(プロフ) - 更新ぜひ..!!よろしくお願いします!! (8月8日 0時) (レス) @page34 id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 続きが気になりすぎます!!更新楽しみにしてます (7月27日 21時) (レス) @page34 id: 697dde3f4a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 一気見してもうハラハラして次が待てませんんんん!うそです、無理しないでゆっくりでいいので更新待ってます! (7月2日 4時) (レス) @page34 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すい | 作者ホームページ:http://twitter.com/sui_no_heya
作成日時:2022年9月24日 20時