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『えっと…この20個入りのください』
「かしこまりました！ラッピングに付けるシールはどうなさいますか？」
『……えっと、このThank Youって書いてあるピンクのシールでお願いします』
結局家の近くのパティスリーで1番お気に入りのマドレーヌセットを買った。
私はメイクに集中し過ぎてたり、距離感を間違えないように一線引いていたからこの店をオススメしたりなんて会話は出来なかった。最後くらい私の好きなモノをオススメしてもバチは当たらないんじゃないかな、なんて都合のいい考えを持ってしまったけどホントに大丈夫かな…
「ありがとうございました！」
夕方、オレンジ色に染まる景色を背景に少し重いお菓子の袋を持って歩く。
なんて言って渡そうかな、なんて考えてたけどよく考えると明日から来週まで皆さんは久しぶりのオフだから会社には来ない。私の契約はキッチリ半年間だし、多分明後日には前のメイクさんが戻って来る。
きっと私が辞めるタイミングは明日がピッタリ。
『もっとありがとうって言えばよかったな…』
ガサッと鳴る袋の音に紛れてるから、きっと鼻をすする音は周りに聞こえてない。
下を向いてるから涙を流してるのもきっと周りから見えてない。
いい年こいて道端で泣くなんて情けない。いつから私はこんなに彼らに絆されてしまったんだろう。
辞めたくない
喉元まで出かかった言葉をグッと飲み込む。
いけない、声に出してしまったらきっともう止められなくなってしまう。
やっと決意したのに全部台無しになってしまうじゃないか。
明日代表さんに辞表を出して、スアオンニにもメッセージ送っておいてお菓子を置いてすぐに帰ろう。
じゃないときっと、あまりにも思い出の多すぎるあの場所に居たら私はもう辞表を出せなくなってしまう。
「お母さん、夕日きれいだね！オレンジだね！」
「そうね、明日はきっと良い日になるわね」
すれ違う親子の会話に、私はふと夕日に視線を移す。
暖色に色づく世界は本当に綺麗で、汚れた自分の私欲に塗れた心が際立って汚く感じた。
彼らのためにも、スアオンニのためにも我儘は言わない。
沢山私を育ててくれた皆さんに恩を返すならこの気持ちに蓋をしよう。
『よし！』
バチンっと両頬に気合を入れて、夕焼けに照らされた帰り道を少しずつ噛み締めながら決意を胸に足を進めた。
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よん(プロフ) - 素敵な作品で一気に読んでしまいました！更新楽しみにしています！！ (4月2日 18時) (
レス) @page34 id: 17dcf2bc33 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ - 更新楽しみにしてます！！ (12月2日 0時) (レス) @page34 id: 70f217a4be (このIDを非表示/違反報告)
犬飼いたい(プロフ) - 更新ぜひ..！！よろしくお願いします！！ (8月8日 0時) (レス) @page34 id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 続きが気になりすぎます！！更新楽しみにしてます (7月27日 21時) (レス) @page34 id: 697dde3f4a (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 一気見してもうハラハラして次が待てませんんんん！うそです、無理しないでゆっくりでいいので更新待ってます！ (7月2日 4時) (レス) @page34 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すい
| 作者ホームページ：http://twitter.com/sui_no_heya
作成日時：2022年9月24日 20時
